漢方薬がすぐわかる、すぐ使えるー疲労倦怠感
今回は、新見先生の漢方JPにから、疲労倦怠感解消の漢方薬を紹介します。
疲労を解消する漢方生薬は、人参、黄耆です。
人参は、補益薬といわれ、気、血、陰、陽を補う生薬に分類されていて、
五臓では、脾と肺に働きます。中医では大補元気、補脾益肺の効能があると言われています。
いかにも元気が出そうです。
人参の効果を強化するために、黄耆を併用されたもの(人耆剤といわれます)と白朮、茯苓、甘草を併用するもの(四君子湯の君薬といわれる生薬です)があります。
クリニックで、疲労倦怠感の西洋薬は処方してくれませんが、漢方薬では処方できます。
目次
疲労倦怠感を解消する漢方薬
四君子湯と六君子湯
四君子湯は、元気回復の人参とその効果を強化する白朮、茯苓、甘草が配合されています。
六君子湯は、四君子湯に半夏と陳皮が加えられたいますが、食欲を出すことにより、疲労を回復する漢方処方です。
六君子湯は、胃に良い働きをする漢方薬ですが、胃に違和感が出る人は、四君子湯がお勧めです。
補中益気湯
人参と黄耆(人耆剤)に柴胡が配合されています。
柴胡が配合されていますので、風邪がこじれたとき(小陽病期)にも使用されます。
十全大補湯
黄耆と四君子湯の君薬(人参、白朮、茯苓、甘草)と四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)が入っています。
黄耆と四君子湯は、気力を増し、四物湯は、血を補いますので(補血薬)、貧血などの血虚の症状に効きます。
人参養栄湯
人耆剤に、物忘れに効果のある遠志が含まれていています。
フレールに効く漢方薬ですが、高齢者の筋力の維持やバランスの維持によって老化を防止する効果があります。
半夏白朮天麻湯
めまいの強い人に使用される処方ですが、これも人耆剤が含まれていて、元気を回復します。めまいの人耆剤です。
帰脾湯、加味帰脾湯
心の人耆剤です。物忘れに効く、遠志もはいっています。
現在、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の減薬のために、ぼくも服用中です。
大防風湯
関節リュウマチ(慢性の関節炎)の人耆剤です。
当帰湯
肋間神経痛みの人耆剤です。
清子連子飲湯
泌尿器系の人耆剤です。
清暑益気湯
夏バテの人耆剤です。
新見先生は、慶応義塾大学の医学部を卒業後、英国オックスフォード大学医学部博士課程。ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞されています。
現在は、帝京大学医学部大学院 東洋医学講座 指導教授をされており、これまでの先生の漢方治療の経験をもとに、医療現場への漢方治療の導入を啓蒙をされています。
疲労倦怠感を解消する生薬
疲労倦怠感の効能表示のある漢方薬には、概ね下記の生薬が配合されています。
特に、人参が君薬です。
人参
人参は、補益薬で、気、血、陰、陽を補います。
五臓六腑:脾、肺
補脾益肺、大補元気
安神増智:心を落ち着かせ頭をすっきりさせる作用)
黄耆
黄耆は、補益薬で、気、血、陰、陽を補います。
五臓六腑:脾、肺に作用します。
補気昇陽:気を補い、陽気を上昇します。
益衛固表:表面の衛り(守り)を固めます。
托毒生肌:肌を生みます。
利水退腫:水を排出して腫れを取ります。
柴胡
柴胡は解表薬で、体の内部に入った「熱」の邪気を追い出す作用があります。
五臓六腑:肝と三焦に作用します。
和解耐熱:往来寒熱を抑えます。
疎肝解鬱:流れの悪さからくるイライラや不安感を取り除きます。
昇挙陽気:気持ちをあげます。
遠志
遠志は安神薬で、気持ちを抑えます。
五臓六腑:肺、心に作用します。
寧心安神:気持ちを落ち着かせます。
去痰開竅:痰を除きます。
消癰腫:皮膚の化膿を鎮めます。
不安、動悸、不眠や精神不安定などの際に用いられる生薬です。
白朮
白朮は芳香化湿薬で、香りの作用で湿を除く生薬です。
五臓六腑:脾に作用します。
燥湿健脾:消化器の余分な水分を除き胃腸強化をします。
去風湿:風湿の邪も追い払います。
茯苓
茯苓は利水滲湿薬で、小便の出をよくし、余分な水分である湿を除く作用を持ちます。
五臓六腑:心、脾、腎に作用します。
利水滲湿:小便により余分な水分を除きます。
健脾:胃腸を健やかにします。
安神:こころを穏やかにします。
日本中医薬研究会 中医学 生薬編より抜粋