漢方薬がすぐわかる、すぐ使えるー冬場の乾燥肌
今回は、新見先生の漢方JPにから、冬場の乾燥肌に有効な漢方薬を紹介します。
乾燥肌を解消する漢方薬は、四物湯(血虚の解消)がベースの当帰飲子、温清飲がお勧めです。
冬は、寒くて冷えて、乾燥する季節です。
そのため、血液の循環が悪くなって肌の潤いがなくなり、乾燥した大気のために肌表面が乾燥します。
いわゆる乾燥肌のことですが、かゆみが出たり、お化粧のノリが悪くなったりします。
漢方では、このような症候を血虚といいます。
乾燥肌に代表されるカサカサ肌には、補血、活血効果のある生薬が配合されている四物湯ベースの漢方薬がお勧めです。
目次
冬の乾燥肌を解消する漢方薬
当帰飲子
虚弱な人(虚証)のカサカサ皮膚、高齢者のカサカサ、透析中の患者さんのカサカサには、当帰飲子が適用されます。
当帰飲子は、四物湯の他、蒺莉子、防風、荊芥、黄耆、何首鳥、甘草から構成されている漢方薬です。
温清飲
四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)と黄連解毒湯の合剤です。黄連解毒湯は清熱薬ですので、アトピーの”かゆみ”のある”アツアツ感”を緩和します。
新見先生は、慶応義塾大学の医学部を卒業後、英国オックスフォード大学医学部博士課程。ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞されています。
現在は、帝京大学医学部大学院 東洋医学講座 指導教授をされており、これまでの先生の漢方治療の経験をもとに、医療現場への漢方治療の導入を啓蒙をされています。
乾燥肌を改善する生薬
アトピーや乾燥肌からからくカサカサ皮膚の改善には、概ね下記の生薬が配合されています。
特に、四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)が主体となります。
当帰
当帰は、補益薬といわれ、気、血、陰、陽を補う効果があります。
五臓六腑:肝、心、脾
補血、活血、止痛、潤腸
血を補い、流れを良くし、痛みを止めて、腸を潤します。不妊や生理トラブルなどの婦人科系疾患に使用さることが多く、便秘などにも使用されます。
芍薬
芍薬は、補益薬といわれ、気、血、陰、陽を補う効果があります。
五臓六腑:肝、脾に作用します。
養血斂陰、柔肝止痛、平抑肝陽
血を補い、肝を柔らかくして痛みを止め、肝の陽の過剰を上昇を抑えます。
婦人科疾患やめまいに効果があります。
川芎
川芎は活血きょお薬で、血液の流れをスムーズにし、滞りを解消する作用があります。
五臓六腑:肝に作用します。
活血行気、きょ風止痛
気と血の流れをスムーズにし、風邪を除く、痛みを止めます。生理痛、しびれ、痛みや風の頭痛に使用されます。
漢方薬がすぐわかる、すぐ使えるー女性の不定愁訴
今回は、新見先生の漢方JPにから、女性の不定愁訴に有効な漢方薬を紹介します。
女性の不定愁訴を解消する漢方薬は、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散です。三大婦人薬といわれています。
女性の不定愁訴は、主に、月経不順など女性ホルモンのバランスが崩れることにより引き起こされますが、漢方では 瘀血(血液が詰まり、溜まりができること)がその原因と考えています。
三大婦人薬の駆瘀血作用により、冷え性、貧血、生理不順・生理痛、むくみ、頭痛、めまい、のぼせ、肩こり、不妊症、更年期障害を解消します。
目次
女性の不定愁訴を解消する漢方薬
当帰芍薬散
やや虚証の女性の不定愁訴(冷え、貧血、月経不順・月経痛)に効果的です。
不妊症の第一選択薬でもあります。
桂枝茯苓丸
実証(がっちりタイプの女性)の不定愁訴に適用されます。
桃核承気湯と当帰建中湯
桃核承気湯は、承気湯類と呼ばれ、大黄と芒硝の2種類の生薬が使用されていますので、桂枝茯苓丸よりさらに実証の女性で、便秘の症状がある場合に効果があります。
当帰建中湯は、当帰芍薬散よりの虚証(華奢な人)な人に有効です。
加味逍遙散
加味逍遙散は、更年期障害、自律神経失調症と一般に言われる症状のある人に適用されます。
即効性はないようですが、1年、2年と継続的に服用すると楽になっていくようです。
新見先生は、慶応義塾大学の医学部を卒業後、英国オックスフォード大学医学部博士課程。ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞されています。
現在は、帝京大学医学部大学院 東洋医学講座 指導教授をされており、これまでの先生の漢方治療の経験をもとに、医療現場への漢方治療の導入を啓蒙をされています。
女性の不定愁訴を改善する生薬
便秘の効能表示のある漢方薬には、概ね下記の生薬が配合されています。
特に、大黄、麻子仁丸、芒硝が主体となります。
当帰
当帰は、補益薬といわれ、気、血、陰、陽を補う効果があります。
五臓六腑:肝、心、脾
補血、活血、止痛、潤腸
血を補い、血の流れを良くし、痛みを止めて、腸を潤します。不妊や生理トラブルなどの婦人科系疾患に使用さることが多く、便秘などにも使用されます。
芍薬
芍薬は、補益薬といわれ、気、血、陰、陽を補う効果があります。
五臓六腑:肝、脾に作用します。
養血斂陰、柔肝止痛、平抑肝陽
血を補い、肝を柔らかくして痛みを止め、肝の陽の過剰を上昇を抑えます。
婦人科疾患やめまいに効果があります。
川芎
川芎は活血きょお薬で、血液の流れをスムーズにし、滞りを解消する作用があります。
五臓六腑:肝に作用します。
活血行気 (ぎょうき)、きょ風止痛
気と血の流れををスムーズにし、風邪を除き、痛みを止めます。生理痛、しびれ、痛みや風の頭痛に使用されます。
牡丹皮
牡丹皮は、清熱薬で、体に入った熱邪を除く生薬です。
五臓六腑:肝に作用します。
清熱涼血、活血散お
血の熱を冷まし、血流をスムーズにします。皮膚病のほか、生理痛や生理不順などに使用される生薬です。
桃仁
五臓六腑:肝、心、肺に作用します。
活血きょお、潤腸通便
漢方薬がすぐわかる、すぐ使えるー便秘、腹部膨満感
今回は、新見先生の漢方JPにから、便秘の漢方薬を紹介します。
便秘を解消する漢方生薬は、大黄です。
大黄は、瀉下薬といわれ、便を排出することで、体内の邪気などを追い出すことを目的とする生薬です。
体の大掃除ですね。
目次
便秘を解消する漢方薬
大黄甘草湯
急性の便秘で、頓服的に使用します。
生薬は、大黄と甘草の2種類だけですから、即効性がりますが、長期に使用すると効きづらくなります。
頓服的に服用することが必要です。
潤腸湯、麻子仁丸
常習の便秘の人には、潤腸湯(大黄+他9個の生薬)、麻子仁丸(大黄と麻子仁丸+4個の生薬)などのように大黄以外に多くの生薬を含むものが良いです。
長期に服用しても効果は減少しません。
高齢者や体が弱い人の便秘の解消に利用されます。
桃核承気湯、大承気湯、調胃承気湯
これらは、承気湯類と呼ばれ、大黄と芒硝の2種類の生薬が使用されていますので、麻子仁丸や潤腸湯より効果は強くなります。
大黄剤よりすっきり出ます。
小柴胡湯、加味逍遙散
大黄で腹痛が出る場合、小柴胡湯や加味逍遙散などの柴胡剤が有効です。
大建中湯
便をやわらくしたい時に使用されます。
特に冷えによる便秘にはよいです。
消化器系の手術後や手術前に使用されるようです。(腸閉塞、イレウス)
新見先生は、慶応義塾大学の医学部を卒業後、英国オックスフォード大学医学部博士課程。ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞されています。
現在は、帝京大学医学部大学院 東洋医学講座 指導教授をされており、これまでの先生の漢方治療の経験をもとに、医療現場への漢方治療の導入を啓蒙をされています。
便秘を解消する生薬
便秘の効能表示のある漢方薬には、概ね下記の生薬が配合されています。
特に、大黄、麻子仁丸、芒硝が主体となります。
大黄
大黄は、瀉下薬といわれ、便を排出することで、体内の邪気などを追い出すことを目的とします。
五臓六腑:脾、肝
瀉下攻績、清熱瀉火、解毒、活血きょお
便により不要物を追い出し、熱を冷まし解毒し、血行を改善し滞りを解消します。
麻子仁丸
麻子仁は、瀉下薬で、主に高齢者や体の弱い方に使用されます。
五臓六腑:脾に作用します。
潤腸通便
柴胡
柴胡は解表薬で、体の内部に入った「熱」の邪気を追い出す作用があります。
五臓六腑:肝と三焦に作用します。
和解耐熱:往来寒熱を抑えます。
疎肝解鬱:流れの悪さからくるイライラや不安感を取り除きます。
昇挙陽気:気持ちをあげます。
山椒
山椒は、温裏薬で、体の奥の冷えを除く生薬です。
五臓六腑:脾、腎に作用します。
温中、止痛、殺虫:お腹を温めて、痛みを止め、寄生虫をやっつけます。
漢方薬がすぐわかる、すぐ使えるー疲労倦怠感
今回は、新見先生の漢方JPにから、疲労倦怠感解消の漢方薬を紹介します。
疲労を解消する漢方生薬は、人参、黄耆です。
人参は、補益薬といわれ、気、血、陰、陽を補う生薬に分類されていて、
五臓では、脾と肺に働きます。中医では大補元気、補脾益肺の効能があると言われています。
いかにも元気が出そうです。
人参の効果を強化するために、黄耆を併用されたもの(人耆剤といわれます)と白朮、茯苓、甘草を併用するもの(四君子湯の君薬といわれる生薬です)があります。
クリニックで、疲労倦怠感の西洋薬は処方してくれませんが、漢方薬では処方できます。
目次
疲労倦怠感を解消する漢方薬
四君子湯と六君子湯
四君子湯は、元気回復の人参とその効果を強化する白朮、茯苓、甘草が配合されています。
六君子湯は、四君子湯に半夏と陳皮が加えられたいますが、食欲を出すことにより、疲労を回復する漢方処方です。
六君子湯は、胃に良い働きをする漢方薬ですが、胃に違和感が出る人は、四君子湯がお勧めです。
補中益気湯
人参と黄耆(人耆剤)に柴胡が配合されています。
柴胡が配合されていますので、風邪がこじれたとき(小陽病期)にも使用されます。
十全大補湯
黄耆と四君子湯の君薬(人参、白朮、茯苓、甘草)と四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)が入っています。
黄耆と四君子湯は、気力を増し、四物湯は、血を補いますので(補血薬)、貧血などの血虚の症状に効きます。
人参養栄湯
人耆剤に、物忘れに効果のある遠志が含まれていています。
フレールに効く漢方薬ですが、高齢者の筋力の維持やバランスの維持によって老化を防止する効果があります。
半夏白朮天麻湯
めまいの強い人に使用される処方ですが、これも人耆剤が含まれていて、元気を回復します。めまいの人耆剤です。
帰脾湯、加味帰脾湯
心の人耆剤です。物忘れに効く、遠志もはいっています。
現在、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の減薬のために、ぼくも服用中です。
大防風湯
関節リュウマチ(慢性の関節炎)の人耆剤です。
当帰湯
肋間神経痛みの人耆剤です。
清子連子飲湯
泌尿器系の人耆剤です。
清暑益気湯
夏バテの人耆剤です。
新見先生は、慶応義塾大学の医学部を卒業後、英国オックスフォード大学医学部博士課程。ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞されています。
現在は、帝京大学医学部大学院 東洋医学講座 指導教授をされており、これまでの先生の漢方治療の経験をもとに、医療現場への漢方治療の導入を啓蒙をされています。
疲労倦怠感を解消する生薬
疲労倦怠感の効能表示のある漢方薬には、概ね下記の生薬が配合されています。
特に、人参が君薬です。
人参
人参は、補益薬で、気、血、陰、陽を補います。
五臓六腑:脾、肺
補脾益肺、大補元気
安神増智:心を落ち着かせ頭をすっきりさせる作用)
黄耆
黄耆は、補益薬で、気、血、陰、陽を補います。
五臓六腑:脾、肺に作用します。
補気昇陽:気を補い、陽気を上昇します。
益衛固表:表面の衛り(守り)を固めます。
托毒生肌:肌を生みます。
利水退腫:水を排出して腫れを取ります。
柴胡
柴胡は解表薬で、体の内部に入った「熱」の邪気を追い出す作用があります。
五臓六腑:肝と三焦に作用します。
和解耐熱:往来寒熱を抑えます。
疎肝解鬱:流れの悪さからくるイライラや不安感を取り除きます。
昇挙陽気:気持ちをあげます。
遠志
遠志は安神薬で、気持ちを抑えます。
五臓六腑:肺、心に作用します。
寧心安神:気持ちを落ち着かせます。
去痰開竅:痰を除きます。
消癰腫:皮膚の化膿を鎮めます。
不安、動悸、不眠や精神不安定などの際に用いられる生薬です。
白朮
白朮は芳香化湿薬で、香りの作用で湿を除く生薬です。
五臓六腑:脾に作用します。
燥湿健脾:消化器の余分な水分を除き胃腸強化をします。
去風湿:風湿の邪も追い払います。
茯苓
茯苓は利水滲湿薬で、小便の出をよくし、余分な水分である湿を除く作用を持ちます。
五臓六腑:心、脾、腎に作用します。
利水滲湿:小便により余分な水分を除きます。
健脾:胃腸を健やかにします。
安神:こころを穏やかにします。
日本中医薬研究会 中医学 生薬編より抜粋
漢方薬がすぐわかる、すぐ使えるー不眠症
今回は、新見先生の漢方JPにから、不眠解消の漢方薬を紹介します。
処方薬での睡眠薬(民薬、睡眠導入剤)は、ベンゾジアゾピン系のものが多用されています。
ぼくの場合、30代のころからすぐ寝れなかったり、夜中に目が覚めたりしするので、レンドルミンを時々服用しています。
不安症とも30代からのお付き合いで、ベンゾジアゼピン系のメイラックスが長年の友となっています。
しかし、ベンゾジアゼピン系は、非常によく効くのですが、依存性があることや飲みすぎにより効果が弱くなったり、服用中止時に離脱症状がおこる可能性があることから、厚労省から注意喚起のガイダンスが出ているようす。
最近、掛かりつけのクリニックの先生に、ベンゾジアゼピン系からSNRIやSSRIなどの抗うつ剤に変えることを勧められていますが、なかなか切り替える勇気が出てきません。
そこで、私は漢方薬との併用によって、ベンゾジアゼピン系睡眠薬や安定剤を少しづつ減らすことに挑戦しています。
目次
不眠を解消する漢方薬
加味帰脾湯、帰脾湯
加味帰脾湯には、疲労感を感じている人に効果がある人参と黄耆という参耆剤という生薬と気持ちが落ち着いて楽になる酸棗仁、柴胡、山梔子という生薬が入っています
帰脾湯は、加味帰脾湯から酸棗仁と柴胡を除いたものですが、加味帰脾湯が飲めない、より虚証な人に向きます。
抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、抑肝散加芍薬黄連
気持ちが高ぶって眠れないときに使用します。
抑肝散は、柴胡と釣藤鈎という生薬が入っているので、気持ちがおさまります。
抑肝散加陳皮半夏には、陳皮と半夏が入っていますが、より虚証(高齢者や体力のない人)の使用されます。
抑肝散加芍薬黄連は、黄連がカーとした気持ち(気逆)を治めます。
黄連解毒湯
カッカしてるのを冷やすイメージの漢方薬です。
加味逍遙散
加味逍遙散にも柴胡が入っており、不眠によい漢方薬です。
柴胡加竜骨牡蛎湯
柴胡だけではなく竜骨と牡蛎(安神)が気持ちを抑えます。
柴胡桂枝乾姜湯
温める生薬の乾姜と安神効果のある牡蛎を入っているので、眠りやすくなります。
酸棗仁湯
睡眠をたすけるだけでなく、寝すぎも抑えます。不眠症というより、睡眠調整の効果があります。
温胆湯
不眠症の効能書があります。
補中益気湯
柴胡剤、人耆剤で、不眠に使用されます。
新見先生は、慶応義塾大学の医学部を卒業後、英国オックスフォード大学医学部博士課程。ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞されています。
現在は、帝京大学医学部大学院 東洋医学講座 指導教授をされており、これまでの先生の漢方治療の経験をもとに、医療現場への漢方治療の導入を啓蒙をされています。
不眠を解消する生薬
不眠の効能表示のある漢方薬には、概ね下記の生薬が配合されています。
特に、柴胡は不眠によく効く生薬です。
柴胡
柴胡は解表薬で、体の内部に入った「熱」の邪気を追い出す作用があります。
五臓六腑:肝と三焦に作用します。
和解耐熱:往来寒熱を抑えます。
疎肝解鬱:流れの悪さからくるイライラや不安感を取り除きます。
昇挙陽気:気持ちをあげます。
酸棗仁
酸棗仁は安神薬で、気持ちを抑えます。
五臓六腑:肝、心に作用します。
養心安神:気持ちの高ぶりを抑えます。
斂汗:汗を止めます。
山梔子
山梔子は清熱薬で、体内に入った熱邪を追い出します。
五臓六腑:心、肺、胃、三焦に作用します。
瀉火除煩:火を追い出し、気持ちを鎮める
清熱利湿:熱を冷まし、湿を取り除く。
涼血解毒:血を冷まし、解毒します。
釣藤鈎
釣藤鈎は、平肝熄風薬で、肝風を鎮める作用を持ちます。風はめまいや痙攣の原因になりますので、風を落ち着かせることが心身安定をもたらします。
五臓六腑:肝に作用します。
息風止痙:内風を抑え、痙攣をとめます。
清熱平肝:熱をさまし、肝を安定させてます。
黄連
黄連は、清熱燥湿薬で、体内に入った熱邪と湿邪を追い出します。
五臓六腑:肝、心の作用します。心に働いて不眠を解消し、肝に働いて目の充血に用いられます。
清熱燥湿
瀉火解毒
人参
人参は、補益薬で、気、血、陽を補います。
五臓六腑:脾、肺
補脾益肺
大補元気
安神増智
生津止渇:津液を生み、渇きを止めます。
黄耆
黄耆は、補益薬で、気、血、陽を補います。
五臓六腑:脾、肺に作用します。
補気昇陽:気を補い、陽気を上昇します。
益衛固表:表面の衛り(守り)を固めます。
托毒生肌:肌を生みます。
利水退腫:水を排出して腫れを取ります。
日本中医薬研究会 中医学 生薬編より抜粋
漢方薬がすぐわかる、すぐ使えるー痛み編
最近、新見先生の漢方JPにはまっています。
新見先生は、慶応義塾大学の医学部を卒業後、英国オックスフォード大学医学部博士課程。ハーバード大学にてイグノーベル賞受賞されています。
現在は、帝京大学医学部大学院 東洋医学講座 指導教授をされており、これまでの先生の漢方治療の経験をもとに、医療現場への漢方治療の導入を啓蒙をされているようです。
新見先生は、もともと外科が専門であり、漢方医ではないとおっしゃていますが、和漢のみならず、中医学にも精通されており、西洋医学の治療現場に、多くの漢方薬を処方し、多くの患者を助けてこられたようです。
漢方JPは、わたしのような新米漢方薬剤師にも漢方治療、その存在意義、患者さんへの漢方治療の実践が理解できる非常にわかりやすいサイトとなっています。
是非これから何回か新見先生の漢方JPの講義をもとにして、わかりやすい漢方治療について紹介していきたいと思います。
目次
痛みを解消する漢方薬
芍薬甘草湯
一言に痛みといってもいろいろありますが、芍薬甘草湯は胃痙攣、足がつる、しゃっくり、ぎっくり腰などの筋肉のけいれんや引きつりによりおこる痛みによく効きます。
構成生薬が芍薬と甘草の2種類のみですので、即効性があります。ただし、長期に服用すると効き目が弱くなってきますので、頓服で服用するのがよいでしょう。
GF場で、キャディさんが、足がつった人用(こむら返り)に常備しているほどすぐに効果が現れるようです。
ロキソニンやアセトアミノフェンなどにアレルギーのある人が稀にいるようですが、このような人の代替鎮痛剤として、芍薬甘草湯が処方されています。
牛車腎気丸(八味地黄丸)
牛車腎気丸、八味地黄丸は、高齢者の腰下肢痛、しびれに効きます。
高齢者の頻尿、気力が無い、精力がない、目が見えない、耳が聞こえない等の症状の改善に使用される漢方薬ですが、高齢者によくある腰痛や関節痛、しびれに汎用されます。
特に、構成生薬の附子は、トリカブトの減毒処理をしたもので、これを増量すると、高齢者の痛みやしびれの改善効果が増強されます。
五苓散
五苓散は、痛みの中の頭痛に効果があります。頭痛も様々な理由で起こりますが、脳のむくみによって頭痛が発生している場合、五苓散がよく効きます。
二日酔いによく効くといわれますが、私も常習者です。飲む前と飲んだ後に、五苓散を服用すると、翌日の頭痛が相当軽減されています。あとは、痛みではないですが、二日酔いの吐気や嘔吐にもよく効きます。
加味逍遙散
自律神経失調症、更年期障害などの不定愁訴に含まれる痛みに、加味逍遙散がよく効きます。
即効性はないですが、じわりじわりと不定愁訴の症候が解消されます。
麻黄を含む漢方薬
麻黄は、風邪の初期(漢方は、太陽病と言われる時期です)ときに使われる麻黄湯、葛根湯や関節痛に使用される越婢加朮湯に入ってます。
麻黄の含まれる漢方薬は、頭痛、喉痛、関節痛、筋肉痛、肩こり、首筋の痛みに効く即効性の生薬ですので、痛みが辛いときに頓服的に服用すると良いでしょう。
新見 正則 帝京大学医学部大学院 東洋医学講座 指導教授
https://www.youtube.com/watch?v=kfPVnTsL6s0&t
痛みに効く生薬
生薬に関する説明を、中医学の資料から抜粋して、解説してみました。
白芍薬
芍薬は清熱薬で、体の内部に入った「熱」の邪気を追い出す作用があります。
芍薬には、白芍薬と赤芍薬があり、赤芍薬は清熱涼血 の活血薬で、白芍薬は、補血・緩急止痛の効果があり、芍薬甘草湯のように痛みを止める目的で芍薬を使う場合には白芍薬を用います。
五臓六腑:肝に作用します。
補血・緩急止痛:血を補い、ほぐして痛みを和らげます。
附子
附子は温裏薬で、体の奥の冷えを除く作用があります。
五臓六腑:心、脾、腎に作用します。
回陽救逆:陽気を回復します。
補火助陽:陽を助けて、火を補います。
散寒止痛:寒を除いて痛みを止めます。
麻黄
麻黄は、辛温解表薬で、血管拡張や発汗力が強く「表寒」に適応する生薬です。
五臓六腑:肺に作用します。
発汗解表:体を温めて発汗をさせ、風寒の邪を取り除きます。
利水消腫:水の偏在を解消し、浮腫みをとります。
平喘止咳 (へいぜんしがい):喘息や咳症状を和らげます。
日本中医薬研究会 暮らしに生かす中医学 生薬編より抜粋
長年、鬱で眠れなかった親父が、柴胡加竜骨牡蛎湯で眠れたー実体験版
昨夜親父から柴胡加竜骨牡蛎湯(エキス剤)を送ってくれって電話が、
私もパニック障害という持病とつきあってますが、親父は親戚の病気や他界、自身も前立腺がんで手術を受けて、相当のストレスを受けたようで、うつ病を発症していました。
心療内科からは、レメロン(NaSSA)を、6年以上処方されていて日常生活には支障がない程度には回復していますが、時々発作が出る、遠出ができない、眠れない日があるようです。
2019年7月頭に、クラシエ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒45包(3包/日)を2箱をアマゾンで購入して送付してやっておりました。
おそらく、半信半疑で服用していたようですが、2019年10月1日に、夜の9時に飲むとよく眠れる、途中覚醒もないので、もうひと箱送ってくれと連絡がありました。
親父には、柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒は、保険薬なので心療内科の先生に処方してもらうようにアドバイスはしておきましたが、とりあえずもう一箱(15日分)を手配しておきました。
親父は、今年で83歳と高齢のため、めまい、ふらつきなどの抗うつ剤の副作用があるようで、心療内科の先生も、半錠/日で処方していただいているようです。
親父には、レメロンと柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒を併用して様子をみるように勧めています。
できれば、漢方だけの服用で症状が発生しない状態にしてやれればと思います。
以前のように、旅行や遠出のできる状態に戻してやりたいと思っています。
柴胡加竜骨牡蛎湯
適応証(体質)
中間証~やや実証(体力中くらい以上)、胸脇苦満(肋骨下部の張り)、気上衝(のぼせ・イライラ・緊張・不安)となります。
出典
漢時代の「傷寒論」という古典書で紹介されている処方です。
構成生薬
柴胡(解表薬)
五臓六腑:肝、三焦に作用します。
和解耐熱:熱が上がったり下がったり(往来寒熱)と邪気が行ったり来たりしている際に用いると、邪気をしっかり追い払ってくれます。
疎肝解鬱:体の流れ、巡りをよくする作用で、イライラ、生理前の不調、流れ停滞でおこっている症状に用いられます。
昇挙陽気:気を持ち上げる作用です。胃下垂や子宮下垂、脱肛などの内臓下垂や気が落ちてやる気がでないときに用います。
黄芩(清熱燥湿薬)
五臓六腑:肺に作用します。
清熱燥湿:熱を冷まして、湿気を追い出します。
瀉火解毒:火を沈めて解毒します。
止血安胎:流産防止
人参(補益薬)
五臓六腑:脾、肺に効きます。
大補元気:元気を補います。
補脾益肺:脾や肺の気を補います。
生津止渇:津液を生み渇きを止めます。
安神増智:気持ちを安定させます。
大棗(補益薬)
五臓六腑:脾に働きます。
補中益気:胃腸機能を補い気を増やします。
養血安神:血を養って気持ちを安定させます。
緩和薬性:薬物の刺激を緩和します。
茯苓(利水滲湿薬)
五臓六腑:心、脾、腎
利水滲湿(りすいしんしつ):小便を通して余分な水を除きます。
健脾:胃腸を健康にします。
安神:気持ちを落ち着かせます。
半夏(化痰薬)
五臓六腑:脾、肺に働きます。
燥湿化痰:湿、痰を除去します。
降逆止嘔:下におろして嘔気を止めます。
消痞散結:胸やのどのつかえを消します。
生姜(解表薬)
五臓六腑:肺、脾
発汗解表:汗を出して、邪気を追い払います。冷えで生じた寒気、頭痛に用います。
温中止嘔:お腹を温め、吐き気を抑えます。
温肺止咳:温めて、咳を鎮めます。
桂皮(解表薬)
五臓六腑:肺、心
温経通陽:経絡の通りを改善して、陽気を通す作用があります。
竜骨(安神薬)
五臓六腑:肝、腎
平肝潜陽:肝を安定させ陽を落ち着かせます。
鎮静安神:気持ちを静めます。
収斂固渋:汗や尿 、便 、血液などが “不必要に出過ぎてしまうこと ”を抑えます。
牡蛎(平肝熄風薬)
五臓六腑:肝、腎
平肝潜陽:肝を安定させ陽を落ち着かせます。
軟堅散結:堅いものをほぐします。
収斂固渋:汗や尿 、便 、血液などが “不必要に出過ぎてしまうこと ”を抑えます。
日本中医薬研究会 暮らしに生かす中医学 生薬編より抜粋
冷えの体質を漢方で変えよう。第一選択の漢方薬は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯 人参湯 安中散
冷え症の体質改善は、漢方の最も得意とする分野です
女性や高齢者に、冷えで辛い、浮腫む、節々が痛い、だるい、お腹が痛い、下痢する、のぼせる、月経異常があるなどの症状を訴えてる人が多くないですか?
冷え症は、体質、体調の異常を教えてくれているのです。病気になるかもしれないサインなのです。
でも、クリニックに行っても、たいていは冷えでは病気に認定してくれませんし、薬も処方してくれません。
当事者にとっては、とても辛くて立派な病気なのです。
西洋療法で治療してくれない冷えのような症状には、漢方はとても有効な治療法なのです。
一言に冷え症と言っても、指先や足先が冷えて痛いとか痒いといったしもやけのような症状から、胃炎、頭痛、めまい、関節痛などを悪化させたり、発症させる場合もあると思います。
また、体の芯から冷たい、手足の指先が冷たい、腰から下が全体に冷たいなど、冷えを感じる場所によって冷えの原因が異なってきます。
漢方は、冷えの改善に有効な治療法です。
冷えの原因や冷えが引き起こしている症状によって、漢方薬を細かく使い分ければ、効果を最大限引き出すことができます。
今回は、冷え症の原因、体を温める生薬、冷えが引き起こしていると考えられる症状と適用される漢方薬をご紹介します。
目次
冷え性の改善に使用される生薬
冷え症に使用される漢方薬には、下記の温熱薬といわれる生薬が使用されます。
冷えの原因は、4つに分類されます。
一口に冷え性と言っても年齢、性別、体調によって原因は違ってきます。下記に、冷え症の原因を列記しますので、自分の症状は何が原因か考えてみてください。僕は、年齢も50歳を超えているので、熱エネルギーそのものを作る能力が減少していると判断しています。
冷え症の種類による漢方薬の使い分け
冷えの症状によって、漢方薬を細かく使い分けなければ、効果を最大限引き出すことができません。
冷え症によって、全身の寒気、足や指先の冷え、しもやけが発生することが一般的な症状ですが、冷えによって胃腸の調子が悪くなったり、頭痛や精神障害を起こしたりすることがあります。
漢方では、これらの症状を細かく分類し、これらの症状にあった漢方薬を選択することが必要です。
壮健な人(実症)と虚弱な人(虚証)で適用される漢方薬は違う!!
漢方放浪記のブログを立ちあがてから約9か月が経過し、記事数も50近くなりました。
この期間に漢方薬・生薬認定薬剤師の資格も取得し、漢方薬の調査・勉強や実際の服用を通して、漢方薬に対する理解度も相当改善したのではないかと思っています。(笑)
漢方では、同病異治(どうびょういち)といって、人はそれぞれ固有の体質を持ち、症状のあらわれ方も個々人によって違うので、同じ病気でも適用される漢方薬が異なってきます。
今回は、漢方で頻繁に使われる「虚証」、「実証」についておさらいをしたいと思います。
簡単に言いますと、虚証は虚弱な人が不健康になった状態、実証は、壮健な人が不健康になった状態です。
自分の体質が「虚証」と「実証」のどちらかをしることは漢方薬の効果を最大限引きだすための秘訣となります。
例えば、風邪の初期症状で、汗をすごくかく人とまったくかかない人がいます。
前者は虚証で、後者は実証です。
風邪を引いて汗をかいている人(虚証)には、桂枝湯が、
風邪を引いて汗をかいてない人(実証)には、麻黄湯が適用されます。
胃腸の調子が悪い場合で、胃酸が多い・胸焼けがあるには(実証)、黄連解毒湯・三黄瀉心湯が、
胃酸が少ない・もたれる(虚証)には、六君子湯・人参湯が有効です。
目次
下記は、
虚証・実証セルフチェック表
下記のチェックリストでご自身が虚証であるか実証であるかチェックしてみてください。
実証と虚証がとっても理解しやすいと思います。
1.体質
虚証:体力がなく疲れやすい、虚弱
実証:体力があり疲れにくい、壮健
2.汗
虚証:汗をかきやすい
実証:汗をかきにくい
3.顔色
虚証:青白い、黄色い
実証:赤い
4.呼吸
虚証:弱い
実証:荒い
5.声
虚証:低く弱い
実証:高く強い
6.舌
虚証:肥大、歯痕がある、淡白色舌苔が地図状、舌苔が少ない
実証:舌苔が厚い、舌苔が隙間なく生えている
7.胸・腹部
虚証:柔らかい
実証:張り感がある、圧痛がある
虚証:患部を触れられるのを好む
実証:患部を触れられるのを好まない
8.便通
虚証:軟便、下痢しやすい
実証:便秘ぎみ
9.精神
虚証:消極的、委縮しやすい
実証:積極的、興奮しやすい
10.水分代謝
虚証:水分代謝がいい
実証:余分な水分を溜めやすい
11.病気の症状
虚証:穏やか、慢性的
実証:激しい、急性的
12.動作
虚証:静か
実証:活発
診断結果!
チェックした項目の合計数が虚証のほうが多かった人
→ 1:虚証
チェックした項目の合計数が実証のほうが多かった人
→ 2:実証
チェックした項目の合計数が虚証、実証とほぼ同数だった人
→ 3:虚実混合証
おんぼろビルのエアコン、暑さでフル稼働、大量の鼻水ー漢方でなんとかして
まだ花粉の季節には早いと思いますが、同僚の女性が家では平気なのに、会社に来ると鼻水がでるらしいです。
古いビルなので、エアコンからハウスダスト(カビ??)が大量に放出されているのではないかと訴えていました。
鼻水が出続けるので、会社の置き薬の小青竜湯を飲んだようですが、まったく効果なしで、なんかほかの漢方薬を紹介してと頼まれましたが、
スポーツセンターのインストラクターに、ハウスダストだから水を一杯飲んで体内から出したほうが良いと言われたようで、ガブガブ炭酸水を飲んでましたので、先ずはそれを辞めるよう勧めました。
一応、飲んだ水は鼻水になるんだよって言ったら、おしっこになるんじゃないのって言ってました。
漢方では、過剰の水は水毒っていって、水分はバランスを崩して存在すると冷え、浮腫み、めまい、頭痛の原因になる可能性があるんだよって言ったら、水のがぶ飲みやめてました。
翌日には、元気な顔つきになってました。(笑)
今回は、アレルギー性鼻炎に適用される急性、慢性用の漢方薬について紹介してみたいと思います。
目次
アレルギー性鼻炎と漢方薬
寒証タイプ(水溶性の鼻水が出る)のアレルギー性鼻炎
小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、麻黄附子細辛湯、柴胡桂枝乾姜湯の4方剤が使用されます。
アレルギー性鼻炎は、一般に寒証タイプを呈するので、小青竜湯が第一選択薬となります。
麻黄で胃腸が悪くなる虚証の人には、麻黄を含まない苓甘姜味辛夏仁湯を適用します。
また、小青竜湯で不十分で、冷えや寒さによってアレルギー症状が悪化するタイプは、麻黄附子細辛湯を選択します。
冷えのぼせの記事でも説明しましたが、附子のように体全体を温める生薬は、のぼせやほてりを悪化させてしまいますので、柴胡桂枝乾姜湯を選択するとよいでしょう。
熱証タイプ(粘稠な鼻水がでる)のアレルギー鼻炎
越婢加朮湯、葛根湯加川芎辛夷、荊芥連翹湯、辛夷清肺湯の4方剤が適用されます。
熱証タイプのアレルギー性鼻炎で、目や鼻がかゆいという症状を伴っている場合、越婢加朮湯を使用します。
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
蓄膿症の人が、アレルギー性鼻炎を併発した時は、寒証よりも熱証タイプを示すことが多いので、慢性の扁桃腺炎や湿疹を伴う場合は、荊芥連翹湯を、肩こりや頭痛を伴う場合は、葛根湯加川芎辛夷、鼻から喉の奥にかけて熱がある場合は辛夷清肺湯が適応になります。
漢方処方、生薬知識
小青竜湯:麻黄,芍薬, 乾姜, 甘草, 桂皮, 細辛, 五味子, 半夏
苓甘姜味辛夏仁湯:半夏,杏仁,五味子,細辛,茯苓,乾姜,甘草
麻黄附子細辛湯:麻黄, 附子, 細辛
越婢加朮湯:麻黄, 石膏, 白朮, 附子, 生姜, 甘草, 大棗
葛根湯加川芎辛夷:葛根, 麻黄, 桂皮, 芍薬, 甘草, 大棗, 生姜, 川芎, 辛夷
柴胡桂枝乾姜湯:柴胡, 桂皮, 乾姜, 黄芩, 牡蛎, 楼根, 甘草
荊芥連翹湯:当帰, 芍薬, 川芎, 地黄, 黄連, 黄金, 黄柏, 山梔子, 連翹, 荊芥, 防風, 薄荷, 甘草, 芷白, 桔梗, 柴胡
辛夷清肺湯:辛夷, 知母, 百合, 黄金, 山梔子, 麦門冬, 石膏, 升麻, 枇杷葉
高血圧症の漢方治療-降圧剤を減らしたい
私の服用中の降圧剤は、ユニシア配合錠LDです。もう2年くらい飲んでいるでしょうか?
漢方薬の勉強を始める前は、何の知識も疑問もなく服用していましたが、漢方での治療について興味が湧いてきました。
これまで様々な漢方薬を紹介してきましたが、高血圧は気逆の症候のようで、気逆に適用される漢方薬に改善効果が期待できるようです。
実証の人では、三温瀉心湯、黄連解毒湯、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯の4方剤が適用され、虚証の人には、釣藤散、七物降下湯、加味逍遙散、抑肝散加陳皮半夏の4方剤が適用されます。
高血圧症と漢方薬の選択方法
最近の記事では、精神障害(気逆、気鬱)に適用される漢方薬を集中的に紹介してきましたが、ほとんどが高血圧症に適用される漢方薬と共通していることがわかります。
三黄瀉心湯は、気逆(熱誠のぼせ、興奮、赤ら顔、頭痛、心下痞硬)で便秘のある人に、便秘がない場合は黄連解毒湯が適用されます。
大柴胡湯は、神経質、胸脇苦満の人に、更に臍上悸を認める人には柴胡加竜骨牡蛎湯が適用になります。
なお、虚証の高血圧症の人には、釣藤散、七物降下湯、加味逍遙散、抑肝散加陳皮半夏がよく適用されます。
釣藤散は、三黄瀉心湯や黄連解毒湯に似た症候(気逆)に使用されますが、虚証でのぼせが軽度の人に使用されます。
更に血虚の症状が強い場合は、釣藤散より七物降下湯が適用になります。
実証で、神経質、胸脇苦満のある人には、柴胡剤が適用されます。下記の表では、加味逍遙散、大柴胡湯、抑肝散加陳皮半夏、柴胡加竜骨牡蛎湯が選択されますが、加味逍遙散や抑肝散加陳皮半夏は、虚証の人向けですので胸脇苦満の程度が弱くなります。
また、加味逍遙散と抑肝散加陳皮半夏は、その人の性格が選択の要因になるようです。
心を開く人には加味逍遙散、根暗な人には抑肝散加陳皮半夏が選択されます。おもしろいですね。
釣藤鈎を構成する生薬
心電図で異常なし、なんで動悸ー漢方で克服
最近は、めまい、のぼせ、耳鳴りと更年期や自律神経の乱れで現れる症状を連続して紹介してきました。
今回は、私は経験していない症状ですが漢方による動悸の改善についてご紹介したいと思います。
動悸は、心筋梗塞や狭心症、エコノミークラス症候群など致命的な病気のサインである可能性がありますから、病院に必ず行きましょう。
また、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが過剰に分泌される)バセドウ病などの可能性があります。西洋薬の服用でピンポイントに改善する可能性もありますので、やはりまずは病院に行って原因調査が大切です。
しかし、多くの専門医の方々の記事を読む限り、大抵はストレス性のもの、精神障害が原因であるようで、超音波や心電図をとっても異常はないようです。
私の実のお袋がまさにいまその状態です。昨日も連絡をしてみると、夜になると胸がいたくなる、苦しい、もう1か月続いていると訴えていました。
「この痛みが一生続いたらどうしよう」と不安になり、気持ちが安定しないのだと思います。
長期の痛みが体に長く居座ってしましまったため、交感神経系や副交感神経系に異常が起こり、眩暈や動悸が起きているのでしょう。
このような不安感・精神障害から出現している動悸は、実証なら柴胡加竜骨牡蛎湯、虚証なら桂枝加竜骨牡蛎湯を第一に選択します。
動悸を改善する漢方薬
動悸に対する漢方治療においてもっとも汎用されるのは炙甘草湯です。
炙甘草湯は、不整脈や甲状腺機能亢進症といった疾患である場合有効です。
漢方でいう気逆による動悸に対しては、逃走タイプの気逆に有効な桂枝加竜骨牡蛎湯や柴胡加竜骨牡蛎湯が有効です。
逃走タイプの気逆による動悸は、パニック障害のような不安発作や冷えのぼせ、手足の発汗を伴います。
桂枝加竜骨牡蛎湯は虚証の人に、実証は柴胡加竜骨牡蛎湯が選択されます。
桂皮と竜骨、牡蛎を含むこれらの2方剤は、不安や驚きを軽減する(安神作用)ことによって、動悸が出現するのを防ぐことが期待されます。
自律神経失調症、更年期障害では、めまい、のぼせ、冷え、動悸、耳鳴り、発汗が、1ないし数個の症状が出現することが一般的であると思います。
熱盛ののぼせと動悸が併発した場合は、黄連解毒湯が、自律神経失調症から発症する動悸には、柴胡桂枝乾姜湯も有効な方剤となります。
症例紹介
喜多先生の漢方講座でご紹介された実症例をご紹介します。
不安感、動悸、めまい、冷えのぼせの症状、まさに逃走タイプの気逆に対する漢方治療の症例となります。桂枝加竜骨牡蛎湯の煎じ薬を6か月服用し、ほぼ根治されています。
エチゾラム(デパス:抗不安薬)服用者への柴胡加竜骨牡蛎湯の適用症例ですが、1か月程度で効果がみられていることはすばらしいと思います。私も服用中ですが、夜間の中途覚醒がなくなりました。
しつこい頭痛を漢方で克服、片頭痛ー五苓散、呉茱萸湯、釣藤鈎
漢方で頭痛の改善・解消
最近、精神疾患関連の記事を立て続けに書いています。それは、この異常な真夏の高温のせいでこれまで経験していないような精神疾患に私自身が襲われたからです。
更に、お袋が靭帯の手術を受けてから痛みが長引いたせいで、痛みが引いた後も、眠れない、食べれない、動悸がするなどの症状がでているようで、SSRI、SNRI、NaSSA、ベンゾジアゼピン系やらありとあらゆる薬を、心療内科から処方されているようです。
自分にも身内にもこれだけ精神障害が降りかかているため、なんとか漢方で解決できないかと調べつくしているわけです。
私は、気温が落ち着いてきたせいか、症状はかなり改善していて安心しています。
耳鳴りに対しては、西洋薬はアデホスとメチコバール、漢方薬は、五苓散、八味地黄丸を服用、予期不安からくるのぼせには、メイラックスと桂枝加竜骨牡蛎湯で対処しています。
ところで真夏なのに、風邪の症状が出ませんでしたか?
私は痰がからんだり、声が出なくなったり、軽い頭痛や首筋の凝りが出たりんしたので、葛根湯と麻黄湯の頓服服用で、乗り切りました。
本当に、太陽病期(風邪の引き始め)を逃さなければ、葛根湯と麻黄湯は本当によく効きます。
さて、今回の記事は、悪天候で頭が痛くなる、頭痛薬が効かない、アスピリンアレルギーで頭痛薬が飲めない、病院の検査で異常無しの人のために、有効漢方薬をご紹介します。
漢方では、頭痛は、水滞、気逆、気鬱、血虚で出現する症状と考えれています。
目次
漢方からみた頭痛の原因と適応する漢方薬
気、血、水の流れの悪い人は、頭痛、めまいの身体症状がおきます。
漢方ではこれらの流れの悪いことを、水滞、血虚、瘀血、気逆、気鬱といい、頭痛や眩暈を引き起こします。
水滞による頭痛
漢方では、血管内外、細胞内外の体液バランスが異常になっていること、体内での水の偏在を水滞と呼んでいます。
脳は、脳脊髄液という水の中に浮かんでいます。この脳脊髄液が停滞したり過剰になると(脳がむくむ)、むくんだ脳が脳神経を圧迫することにより頭痛が発生します。
低気圧の接近や雨天で悪化する頭痛は、水滞が原因の可能性ありです。
また、水滞は、胃内停水といって胃内に水が停滞する可能性があるので、吐き気や嘔吐をともなうことが多いです。
ちなみに、二日酔いの頭痛には本当によく効きます。私は、常習者です。^_^
水滞を解消する利水剤
水滞を改善する漢方薬を利水剤といいます。
これは西洋薬でいう利尿薬とは違って腎臓に直接働きかけて利尿を促進するだけではなく、血管内外、細胞内外の体液バランスが異常になっているものを(漢方ではこのような水の偏在を水滞と呼んでいます) を、正常にするのが利水剤です。
下記のものは水滞を改善する方剤であるが、五苓散や苓桂朮甘湯は、桂皮を含んでいることから、水滞に気逆をともなうような発作性の頭痛に有効です。
五苓散、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、当帰芍薬散
気逆による頭痛
頭痛、動悸、のぼせなどの症候は、気の上衝がその原因と考えられています。
気の上衡とは、気の流れに異常をきたして、本来下方向に流れるべき気が、上方向に激しく流れる病態をあらわしたもので、漢方では気逆と呼ばれます。
気逆を解消する降気剤
気逆を改善する漢方薬は、降気剤です。
気逆の頭痛の方剤として、下記の4方剤を挙げましたが、発作時には呉茱萸湯がもっとも有効で、当帰四逆加呉茱萸生姜湯や温経湯は発作(発作間欠期)のないときに服用すのがよいでしょう。
また、呉茱萸は大変苦い生薬ですので、どうしても飲めない場合は桂皮の含まれる桂皮人参湯を代用されます。
呉茱萸湯は、冷えを温めながら気逆を改善する呉茱萸と脾胃の働きを改善する人参、大棗、生姜が含まれていますが、桂枝人参湯も冷えを温めながら気逆を改善する桂枝が含まれていることから、これらの方剤は同様の効果が期待されます。
呉茱萸湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、温経湯、桂枝人参湯
気鬱による頭痛
気鬱は、気逆が気の上衝であるのに対して、気の停滞のことです。
気の停滞により、抑うつや不安といった精神症状や喉や胸のつかえ、食欲不振などの身体症状があらわれます。
気鬱を解消する理気剤
気鬱を改善する漢方薬は、理気剤と呼ばれます。
釣藤散、加味逍遙散、女神散、芎帰調血飲、九味檳ろう湯
気逆による頭痛と気鬱による頭痛の見分け方
頭痛は、気逆や気鬱などのストレス障害から引き起こされる場合がありますが、気逆と気鬱によって頭痛などの付随の症候が違ってきます。
この違いによって漢方薬を選択していくことがより強い効果を得るための秘訣となります。
頭痛が発作性であるか、持続性であるか、痛みの箇所局所的であるか、広範囲であるか、吐き気をともなうか、肩こりをともなっているか等がポイントです。
MRIまでやって異常なし、突然の耳鳴りキーン、シーン漢方で克服
キーン、シーンみみなりには、ぜひ漢方薬を試して
そろそろ真夏の恐ろしい高温から解消されそうな季節になってきました。虫の鳴き声も聞こえてくるようになりました。
しかし、今年の夏は散々な目に会いました。パニック発作から自律神経失調症やら更年期障害やらあらりとあらゆる不定愁訴の症状が出てしまいました。いかに異常な暑さだったかということでしょうか。
この暑さから逃げられないと思うとカーっとのぼせが出たり(広場不安)やこの暑さのせいで、のぼせや動悸が出てしまうのではないかと不安になったり(予期不安)と大忙しでした。
特に今年初めて発症して驚いたのは、耳鳴りでした。キャンプに行って清流の流れを聞きながらリラックスしていたら何やら蝉の声が真夜中も聞こえているのです。じーじーて感じでしょうか。その後、一晩程度で治まったのですが何やらキーンという音が聞こえているのです。
流石に驚いてなじみの耳鼻咽喉科に駆け込みましたら、期待通りメチコバール(ビタミンB12)とアデホス(ATP製剤)を処方して頂きました。
初期症状のせいか、即効性があり意外とすぐ治まったのでほっとしました。
しかしまた再発するのが怖いので、メチコバールとアデホスの他に、五苓散と八味地黄丸を服用しているので症状は安定しています。
耳鳴りは、西洋医学的にも原因不明の場合が多いようですが、今回の記事ではみみなりの改善に有効な漢方薬をご紹介したいと思います。
目次
耳鳴りっててなぜ起こる
水滞の証により発症
耳鳴りの原因は、西洋医学的には内耳の血流や聴覚神経の不調などのほかに、中耳炎やメニエール病などの疾患が関係していると考えられていますが、一般には原因不明の場合が多いようです。
漢方では、耳鳴りは、めまいと同様に、主に「水」が原因で起こると考えています。身体の代謝しきれない余分な水が、頭部で脳脊髄液や耳の内リンパ液の循環に影響をおよぼすことによって、めまいや耳鳴りを引き起こすと考えられています。
めまいの記事でも紹介しましたが、耳鳴りも水滞の証(有害物質な体液の体内での停滞)に発生する症候です。
体液は腎臓にて浄化され、浄水として体内に戻され、有害物質を含む汚水は尿(痰、汗、胃液としても排泄)として排泄されます。
漢方では浄水を津液、汚水を水毒と呼び、この水毒が体内に停滞したり、過剰に生産された場合を、水滞の証と呼びます。
気逆の証により発症
耳鳴りは、めまいと同様に、気の上衡(気逆)がその原因であると考えられています。
気の上衡とは、気の流れに異常をきたして、本来下方向に流れるべき気が、上方向に激しく流れる病態をあらわしたもので、漢方では気逆と呼ばれます。
気逆には、2種類タイプの症候がありますので、タイプに合わせて漢方薬を選択すれば、効果を最大限に引き出すことができます。
気鬱の証により発症
気鬱(気の巡りが悪くて頭の方に気が滞ってしまうこと)により耳鳴りが発生する場合があります。
気鬱にも、2種類タイプがありますので、タイプに合わせて漢方薬を選択すれば、効果を最大限に引き出すことができます。
腎虚の証により発症
加齢に伴い難聴や耳鳴りが発生することはよくあるが、これは腎臓の機能低下(腎虚)が原因であると考えられます。
耳鳴りの種類と適用される漢方薬
頭や顔がカーっと熱くなってしまう「のぼせ」漢方で解決
頭や顔がカーっと熱くなってしまう「のぼせ」漢方で解決
前記事で、わたし自身がパニック発作(予期不安、広場恐怖)と20年近く付き合っていることを報告しましたが、どうも季節の変わり目、特に寒い季節から暑い季節に変わるときにこの症状が出てしまいます。
現在、柴胡加竜骨牡蛎湯によりこのパニック発作の根治をめざしている最中ですが、安定剤(メイラック)は、1錠/日により2錠/月まで減薬できており、離脱症状や主な症状であるのぼせやめまいの悪化はおきていませんのでもう一息かと思います。
わたしの発作は、予期不安が発生→その場にじっとしていられなくなる→広場恐怖が発生→頭がカーっとのぼせるといったものですので、柴胡加竜骨牡蛎湯は有効な方剤かと思いますが、のぼせという厄介な症状について、もう少し漢方的な観点で掘り下げてみたいと思います。
目次
のぼせは、2種類ある
のぼせは、 漢方的には重要な症候で、気の上衡(気逆)がその原因であると考えられています。
気の上衡とは、気の流れに異常をきたして、本来下方向に流れるべき気が、上方向に激しく流れる病態をあらわしたもので、漢方では気逆と呼ばれます。
気逆が原因で発症するのぼせには、熱盛のぼせと冷えのぼせの2種類があり、更年期障害でみられるホットフラッシュのように発作的な出現することに特徴があります。
冷えのぼせ
自律神経失調症や更年期障害と診断された人のほとんどの人にのぼせの症状が現れると思いますが、そのほとんどが冷えのぼせです。
上熱下寒とも呼ばれますが、下半身の冷えのため上半身と下半身の温度が生じて発生するのぼせです。
足が冷えて顔がのぼせる、下半身が冷えて上半身が熱っぽい、あるいは足は冷えるが手は温かいというのが冷えのぼせの特徴です。
熱盛のぼせ
ふだんから赤ら顔で目が充血し、のぼせたり、イライラしたり、怒ったり、皮膚は化膿しやすいというのが熱盛のぼせの特徴です。
冷えのぼせのような冷えはないのぼせとなります。
のぼせに適用される漢方薬
のぼせには、冷えのぼせと熱盛のぼせの2種類があります。
冷えのぼせには、温熱薬である桂皮の含まれる方剤が、熱盛のぼせには、寒涼薬である黄連を含む漢方薬が使用されます。
温熱と寒涼効果のある生薬が使用されます
冷えのぼせに適用される漢方薬
気逆+ 瘀血
桂枝茯苓丸は、 瘀血に気逆を伴うタイプに使用され更年期障害に月経不順を伴う冷えののぼせの第一選択薬です。
より実証でのぼせが強い場合、桃核承気湯が、より虚証で冷えが強い場合、温経湯が適用されます。
気逆+ 瘀血+気鬱
心身症でイライラを伴うような冷えのぼせには、加味逍遙散や女神散が使用されます。
気逆+水滞
利水効果のある苓桂朮甘湯は、水滞に慢性の頭痛や起立性調節障害を伴う冷えのぼせの第一選択薬となります。同様に利水効果のある五苓散は、より水滞の病態が強く、むくみや胃部振水音の目立つ症例に使用されます。
気逆+寒証
冷えの解消には温めることが効果的ですが、冷えのぼせの人の場合、温めるとかえって症状が悪化します。このような場合、当帰四逆加呉茱萸生姜湯や五積散などがよい適用になります。
熱盛のぼせに起用される漢方薬
気逆+熱証
黄連解毒湯は、気逆と熱証(熱盛)の病態を同時に改善することができる方剤で、高血圧、不眠、心悸亢進、ノイローゼ、更年期障害、胃炎、口内炎、皮膚炎などの症候に広く使用されます。
便秘があれば、黄連解毒湯のかわりに三黄瀉心湯を使用します。
気逆+熱証+気虚
気逆と熱証(熱盛)の症候に加えて、胃腸の働きが低下している場合、半夏瀉心湯や黄連湯が有効です。
腹鳴や下痢を伴う場合は半夏瀉心湯、胃痛をともなう場合、黄連湯が選択されます。
気逆+熱証+血虚
気逆と熱証の症候に加えて、血虚による皮膚の乾燥がみられる場合には、温清飲、荊芥連翹湯、柴胡清甘湯が適応となります。