消化器疾患・胃腸障害への漢方治療の秘訣
消化器疾患に対する漢方薬治療の秘訣
令和元年となりました。気持ちも新たに漢方薬治療の習得のために、大型連休中も精進しております。
今回も喜多先生のプライマリケア漢方の講義から得た知識をもとに、漢方薬の疾病や体質の改善に有効な適用方法ついて解説したいと思います。
今回の記事は、過去にも触れていますが、胃腸障害を改善できる漢方薬治療について、パワーアップしてご紹介したいと思います。
喜多先生の「プライマリケケア漢方」と「好きになる漢方治療」を2冊を購入すると、Dr喜多の「プライマリケア漢方」講座3週間マスターコースの講演のすべてを視聴することができます。これらは医師のために書かれた著書です。漢方医学の考え方やその特質を理解したうえで、漢方を日常の臨床に取り入れていきたいとうプライマリケア医師たちの希望に答えるために著されたものですが、我々薬剤師やそれらを適用される方々にも正しい漢方薬の効能や正しい使用法を理解するうえで、非常に有益なものであると思います。
目次
食欲不振の第一選択薬:六君子湯
六君子湯は、気虚の改善に使用される方剤ですが、特に下記のような胃腸障害の症候の第一選択薬として適用されます。
• 食欲の低下
• 胃もたれ
• 消化不良
• 軟便傾向
• 下痢しやすい
なお、六君子湯には、多くの臨床疫学的なエビデンスやグレリンの分泌を更新するといった基礎実験的なエビデンスも多くあります。
基礎実験エビデンス
消化管運動促進作用(村国均,他. 日本東洋医学雑誌 43(2):255-262, 1992)
胃排泄能促進作用(Kido T, et al. J Pharmacol Sci 98(2):161-167, 2005)
胃適応性弛緩に対する作用(Arakawa T, et al. Drugs Exp Clin Res 25(5):207-210
1999;Hayakawa T, et al. Drugs Exp Clin Res 25(5):211-218, 1999)
グレリンに対する作用(Takeda H, et al. Gastroenterology 134(7):2004-2013, 2008)
六君子湯の次の一手:意欲低下を伴う場合
食欲不振が、精神障害や全身倦怠感が引き金になっている場合は、六君子湯よりも他の補気剤が適用されます。ストレスで食欲がなくなったりしますよね。
- 食欲不振が主訴
食欲不振が一番の主訴の場合は、六君子湯が適用です。 - 全身倦怠感のために食欲がわかない
体が疲れて、元気ないために食欲がわかない場合は、補中益気湯が適用です。 - 憂うつ気分のため食欲がわかない 気鬱(抑うつや不安感)のために、食欲不振の場合は、加味帰脾湯が選択されます。
※加味帰脾湯の構成生薬
人参 、白朮、茯苓、酸棗仁、竜眼肉、黄耆、当帰、遠志、柴胡、山梔子、甘草、大棗、生姜、牡丹皮
六君子湯の次の一手:下痢傾向を伴う場合
六君子湯で食欲不振や下痢などの気虚の症候が改善されますが、熱証(暑がり)か寒証(寒がり、冷え性)によって、下記の方剤が六君子湯よりも効果が期待できることがあります。
- やや熱証(暑がり)半夏瀉心湯を使用・・・げっぷ、胸やけなどの逆流型の胃炎
- やや寒証(冷え性)人参湯を使用
冷えを伴う慢性胃腸障害の第一選択薬は人参湯、下痢気味場合は、真武湯、便秘気味の場合は、大建中湯が適用されることは下記の記事で紹介しました。
IBS(過敏性腸症候群)の第一選択薬:桂枝加芍薬湯
過敏性腸症候群の第一選択薬は、桂枝加芍薬湯です。主要生薬は芍薬であり、過敏性腸症候群で大腸の蠕動運動が不規則で調整がうまくいかないときに有効です。
芍薬(君薬)
- 主な含有成分
モノテルペノイド配糖体:ペオニフロリン - 主な薬理作用
鎮静・鎮痛・鎮痙・抗炎症・血圧降下・血管拡張・平滑筋弛緩・胃腸運動促進作用 - 主な薬効
1)滋養して,血虚の病態を改善する
2)腹痛や筋肉痛,痙攣性の痛みを改善する
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IBS(過敏性腸症候群)の下痢には啓脾湯
下痢に適用される漢方薬は、六君子湯、半夏瀉心湯、人参湯、真武湯などを紹介してきましたが、これらのどの方剤でも効果がない場合、過敏性腸症候群の要因を持っている可能性があります。過敏性腸症候群の下痢の場合、啓脾湯が適用されます。
啓脾湯は、気虚、水滞の症候以外に、ストレスの要因が付加された下痢(過敏性腸症候群の下痢)に適用されます。
- 気虚による疲れやすい、体がだるい、気力がない等の症候がある
- 気虚よる消化吸収障害と水滞による水分代謝障害により、腹部不快感、 慢性の下痢、 消化不良便の症候がある
- ストレスによる自律神経の失調により神経症、精神不安、 不定愁訴が発生し、水滞や気虚同様に、腹部不快感、慢性の下痢、消化不良便の症候がある
※啓脾湯
人参、茯苓、白朮、蓮肉、山薬、山査子、陳皮、沢瀉、大棗、生姜、甘草
※六君子湯
人参、茯苓、白朮、半夏、陳皮、大棗、生姜、甘草
便秘に対する漢方治療
通常の便秘の治療には、大黄という生薬が含まれている方剤を使用します。
基本的な瀉下剤
- 大黄甘草湯
習慣性の便秘で,便秘以外には特別の症状がないもの。 体力中等度の人を中心に広く用いられる。 - 桂枝加芍薬湯大黄湯
便秘して,腹部が膨満しているが強い下剤を用いると 腹痛を起こすなどの排便異常があるもの。しばしば腹直筋の緊張を認める。 - 大承気湯
へそを中心に腹部が堅く緊張していて,膨満感が強く便秘するもの。不安,不眠,興奮,のぼせなど精神神経症状を伴うことが多い。 - 麻子仁丸
習慣性便秘に用いられる処方で,とくに老人,病後の 虚弱者に多用する。大便はコロコロで硬く,兎糞状の ことが多い。
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