変形性膝関節症向けの9種の漢方薬と選び方
これまで漢方薬によって、冷えの解消、冷えを温めることが色々な症状を改善できることを集中的に報告してきました。冷えを解消する温熱薬(漢方薬)は、当帰、生姜、桂枝、山茱萸、附子などの生薬が入っているものであり、それらは辛い冷えを解消できる、また冷えを解消することにより胃腸障害や頭痛もよくなることも報告しました。
若干ですが、冷え解消による腰痛の改善についても述べましたが、この回からは、漢方による色々な痛みに対する漢方治療について報告したいと思います。
今回の記事は、変形性膝関節症(関節の軟骨がすり減って痛みや腫れが起こり、それが続くと関節の変形をきたす病気)の痛み対策について紹介します。
熱証と寒証の変形性膝関節症の違い
寒がり(寒証)の変形性膝関節症とは、
寒い季節になると膝が痛くなり、お風呂に入ると楽になる。 膝には水はたまってないし、幹部に熱はない。このような方には、桂枝加苓朮附湯が使用されます。
熱がり(熱証)の変形性膝関節症とは、
若いころにスポーツをしていたりして、年をとって膝に水がたまる、膝にさわると熱を感じ、炎症がある。このような方には、越婢加朮湯が使用されます。
熱証場合は、炎症が起きているので、抗炎症薬も有効であるが、寒証の場合は、炎症がおきてないので、抗炎症薬は効かないようです。
寒証でも熱証でもない変形性膝関節症
四肢関節(両手両足の関節)に、浮腫(むくみ)と疼痛(痛み)があるが、熱はない、非ステロイド系の抗炎症剤が無効であり、冷えが強く胃腸の調子が悪い。入浴すると楽になる。このような方には、寒証に使用する桂枝加苓朮附湯が適用されますが、防己黄耆湯も併用します。
慢性の変形性膝関節症(血虚の体質をともなっている)
変形性膝関節症が長期に続く(慢性)、血虚の膝関節症には、桂枝加苓朮附湯、防己黄耆湯、越婢加朮湯効果ありません。
血虚は、血液生産、循環、組織での利用がうまくいかない状態で、皮膚疾患、筋肉痛、神経痛、関節疾患を引き起こします。
血液は、肝臓で製造されたタンパクやアミノ酸を、身体部位に運ぶことが一つの機能ですが、これがうまく機能しない場合、変形した膝関節の滑膜の再生・修復ができなくなります。
まずは、自分の体質が、血虚かどうか自己診断をしてみましょう。
血虚の症状
- 全身:疲れやすい、体がだるい、体重減少、貧血
- 精神:物忘れ、集中できない、不眠
- 頭部: 顔色が悪い、めまい,立ちくらみ、髪にツヤがなく枝毛が多い、白髪、抜け毛、かすみ目、疲れ目、口が渇く
- 四肢(手足):手足のしびれ、筋肉のけいれん、こむら返り、筋肉量減少
- 皮膚:皮膚のかさかさ、肌荒れや小ジワが気になる、爪が薄く折れやすい
- その他:生理が遅れ気味で経血量が少ない、動悸、息切れ
血虚であと同時に、変形性膝関節症が熱証(暑がり)であるか寒証(冷え性)であるかによって使用される漢方薬が選択されます。
- 冷えの症状があり、皮膚の乾燥やこむら返り、目の乾燥があり(血虚の症候)、変形性両膝関症で、痺れがある人には、大防風湯が使用されます。
- 特に冷えは無く、むくみがあり、血虚の症候のある腰痛、両膝関節痛には、疎経活血湯。
- 熱症(暑がり、幹部に炎症・熱がある)で、むくみが有り、血虚の症候のある変形性膝関節症には、薏苡仁湯(ヨクイニン、ハトムギ)が使用されます。
今回紹介した漢方薬の構成生薬
大防風湯
防風、羗活の組み合わせで、止痛作用を強化します。
防風(ぼうふう)
発汗、解熱、鎮痛作用があり、感冒、頭痛、身体疼痛を改善する薬方に用いる。
羌活(きょうかつ)
発汗、鎮痛作用があり、筋肉痛、神経痛、関節痛などの痛みや皮膚病を改善する薬方に配合される。