季節の変わり目のめまいを漢方薬で克服ー五苓散、真武湯、苓桂朮甘湯
病院の検査で原因のわからないめまいには、漢方の利水剤が有効
梅雨が長引き、日照不足のため低温多湿の日が相当続いていましたが、梅雨が明けて突然高温多湿なになってしまいました。
流石に、急激な温度変化に体調がついていかなくて多くの人が熱中症で病院に運ばれているようです。
僕のプランター菜園のミニトマトも2年目にやっと成功するかと期待をしましたが、まだ小さいうちに赤くなってしまい、葉もほとんど落ちてしまいました。6個ほど収穫しましたが、思った通り酸っぱいだけでした。植物すら体調不良になる天候です。
同僚たちもこの天候変化についていけず、疲れやすいとか気持ちが晴れないだとか、体調がパッとしないなどの体調不良を訴えています。中には、咳が出たり、喉の不調を訴えるひとも多く感冒薬を求める人もいるようです。
30歳位の若い同僚の女性が私のところにきてひどいめまい(眩暈)が突然あらわれて倒れそうになったんだけど、大丈夫かな?って相談してきました。
突然のめまいだったようでしたので、熱中症の初期症状としてめまいが発生することや、梅雨が続いて気圧の変化で、内耳に影響が出る可能性があることを教えてあげました。
漢方では体液が十分に浄化されず汚れていたり、体液が十分に循環していない状態を水滞といい、めまいは水滞の証(体質・症状)の人にあらわれる症候であることも伝えました。
めがぐるぐる回る(回転性のめまい)のようでしたので、万が一に、脳に異常が出ていたら大変なので、とりあえず会社の近くのクリニックを受診するよう勧めました。
病院の検査で原因がわからなかったら、良い漢方薬を紹介してあげるよとも付け加えておきました。
彼女の場合、とても顔色も良かったし、めまいもこの数か月に数度起きた程度のようでしたので、おそらく、末梢性のめまい(内耳や前庭神経に異常がある)ではないかと思っています。
さて、長い長い梅雨あけ高温多湿の真夏になりましたが、これからは台風のシーズンにも突入します。
気圧変化や温湿度の変化による体調不良を訴える人が更に増えると思います。めまいや頭痛はその代表的な症状でないかと思います。
そこで、今回はめまいを克服する漢方薬を紹介したいと思います。
目次
西洋医学でのめまいの種類と原因
西洋医学では、めまいは下表のとおり分類されますが、漢方が適用されるめまいは赤字のものとなります。
注:回転性のめまいにおいては、発生比率は2%程度で稀にではありますが、脳の異常により引き起こされる脳卒中(脳梗塞、脳出血)の前兆である可能性があるので、MRIを取るなどの対処も必要です。
そこで何も異常がない、原因が不明な場合、漢方薬を試したいところです。
めまいの種類と適用される漢方薬
漢方では、めまいは水滞の証(有害物質が浄化されていない体液の過剰や体内での停滞)が原因で発生し、利水剤といわれる漢方薬が適用されます。
西洋医学分類される末梢性のめまいは、内耳を中心とした病気が原因で生じるもので、漢方では水滞が原因とされています。
末梢性のめまいでは、配合されている5つの生薬の全てが利水剤といわれるもので構成された五苓散を第一選択薬として使用します。
また、めまいは、水滞の症候に、立ちくらみや動悸(気逆)、抑うつや喉のつかえ(気鬱)、冷え性や胃腸虚弱(気虚)や月経異常(瘀血)の症候が併発して発生することが多くあります。その場合は、苓桂朮甘湯、真武湯、半夏白朮天麻湯、当帰芍薬散を症状に合わせて適用します。
代表的な利水効果のある生薬
五苓散の構成生薬
どれも水分代謝を改善するものばかりです。特に猪苓、茯苓、蒼朮、沢瀉は、利水効果(水滞の証の改善)のある漢方薬に使用されています。
苓桂朮甘湯の構成生薬
茯苓、蒼朮、桂皮は、五苓散と共通していますね。
パニック障害で電車や飛行機に乗れない 柴胡加竜骨牡蛎湯ー実体験版
私は、予期不安と広場恐怖です。柴胡加竜骨牡蛎湯に挑戦します。
私は、もう20年近くパニック障害を抱えております。
発症したのは、30代半ばで、バリバリに仕事も遊びも謳歌していた最中でした。出張も国内外を問わず飛び回っておりましたが、各地でいろいろ悪いところにもきました。^_^
また、飲みすぎた日は、昼まで寝て午後から深夜まで接待や仕事していました。これで太陽光を浴びない、体内時計ぐちゃぐちゃに。
もちろん仕事も楽しかったので必死でしたが、絶えずプレッシャーを自分に掛けていましたので、夜は寝つきが悪いし、眠れない日が何か月も続いていました。
そしてある出張先のホテルの一室で突然じっとしていらない、広い外に飛びだしたい、頭がかーとなり(のぼせ)症状が出たのです。
数十分して症状が治まりましたが、その症状が出てから、新幹線、特急電車、飛行機(特に長距離の海外主張)に乗るのが恐ろしくなり、なんとか乗ってもその場から動くことができないという恐怖感で”助けてくれー、助けてくれー”と心の中で叫んでいました。
数か月このような精神症状や身体症状が続いて耐えられなくなり、当時では珍しい心療内科を受診することにしました。また、自律神経失調症の本もたくさん読みました。
心療内科の先生は、特にカウンセリングするわけでもなく、問診をするわけでもなくただ、抗不安薬(メイラック、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬)を処方してくれただけでしたが、なんとなくこれがお守りのようになって、症状の緩和には効果がありました。
あれらか、20年近く経過しますが、今もメイラックは推奨量の半量(1mg/錠*1回/日、通常は2回)を服用し続けています。特に、季節の変わり目には症状が出るのではないかかとか、海外出張があるのでまた発作がでるのではないかと考えながら狭いお風呂とかに入ると症状が出ることがあるので、飲み続けているわけです。
最近、ベンゾジアゼピン系からセロトニン再吸収阻害剤(SSRI)への薬変更をためしたのですが、まさに季節の変わり目(冬から春)に試したものですから、同じところにじっとしてられないという精神症状とのぼせが出てしまい断念しました。
流石に20年近く付き合っている病気ですので、対処法を身についていますし、発病当初のような驚きもありませんので、生活にほとんど支障はありませんが、やはり完治したいという気持ちはずっと持ちづつけています。
この病気は、QOLを明らかに低下させています。多くの人の人生の楽しみを奪っていると思います。もしかしたら漢方薬治療の得意分野では?と期待しているわけです。
ちなみに、なんと同じ症状で実の親父も悩んでいるのです。岡山の田舎に住んでいますから、私ほどパニック障害が発生する場面は少ないと思いますが、飛行機や新幹線にはどうも乗れないようです。同じ遺伝子をもっているのでしょうね。
さて、話は長くなりましたが、漢方を勉強して約1年、かなりの漢方薬への知識も構築できましたので、これより私と親父の持病の改善・完治に向けて漢方薬治療を始めたいと思います。
目次
ストレス反応の種類
ストレス反応には、交感神経亢進系と副腎皮質ホルモン分泌系の2種類があることが、キャノン、セリア等により提唱されています。漢方では、前者を気逆、後者を気鬱との症候としてとらえています。
交感神経亢進系のストレス反応は、いつも発生するわけではなく発作的であるのに対して、副腎皮質ホルモン分泌系のストレス反応は、日々症状が現れるものです。
パニック障害は、交感神経亢進系のストレス反応となります。うつ病や日々の緊張で頭痛、肩こり、不眠は日々症状が慢性的に続きますので、副腎皮質ホルモン分泌系のものとなります。私と親父は、前者と判断されます。
交感神経更新系のストレスには、闘争型と逃走型がある
闘争反応タイプ
怒り、怒り安い(易怒性)、焦燥感、顔面紅潮・のぼせ、血圧上昇、不眠には、
黄連解毒湯、三黄瀉心湯です。
※ここでのぼせは、冷えのぼせではなく、熱性ののぼせです。
逃走反応タイプ
恐れ、パニック発作、不安、動悸発作、腹部の動悸、手足の発汗には、
桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯です。
パニック障害は、3つに分類される
パニック障害も3つのパターンは色々な場面で説明されていますが、念のため、パニック障害について簡単に解説します。
パニック障害の症状はさまざまな身体症状をともなうパニック発作、そして予期不安と広場恐怖という精神症状から構成されます。
私は、予期不安と広場恐怖です。柴胡加竜骨牡蛎湯に挑戦します。
パニック発作とは
代表的なパニック発作の症状としては動悸、身体の震え、息苦しさ、冷や汗、寒気、のぼせ、めまい、吐気、口の渇き、胸痛、腹部の不快感などが挙げられます。実際にパニック発作時にどのような症状が起こるのか個人差がありますが、動悸や息苦しさによる呼吸困難は多くの方が訴えられます。パニック発作による症状は激しく、強い恐怖感を生んでしまいます。
予期不安とは
予期不安とは「パニック発作がまた起こってしまうのではないか」という過剰かつ強力な不安感が持続してしまう状態です。予期不安はパニック発作による動悸などと並んでパニック障害において核となる症状といえます。
広場恐怖とは
広場恐怖とはパニック発作が起こった場合、それに対処するための場所が確保できないところに出かけるのを極端に回避する状態を指します。広場恐怖が起こりやすい場所の具体例としてはトイレのない電車やあまり停車しない快速電車といった交通機関、土地勘のない出先、エレベーター内などの狭い空間などが挙げられます。
精神科】パニック症(パニック障害)を、飼いならす【講演】
睡眠専門医渥美正彦先生https://www.youtube.com/watch?v=SIeWdTbNl0k
今回試す漢方薬 柴胡加竜骨牡蛎湯
牡蛎・竜骨
配合されている生薬の牡蛎と竜骨は、簡単に言うとカルシウムの塊です。竜骨はなんと動物の骨の化石です。安神効果があります。
柴胡
ストレスによって起きる精神的・身体的な過緊張状態を漢方では、肝気鬱結といいます。日内リズムいわゆる朝起きて夜寝ることですが、ストレスによりこのリズムが崩れます。また、このリズムをつかさどっているは、漢方では五臓の中の肝(肝臓)の働きとなります。
柴胡は、この肝の働きを活性化することのできる生薬です。
柴胡加竜骨牡蛎湯の臨床例
柴胡加竜骨牡蛎湯のセロトニン神経やドーバパミン神経の機能改善
下記は、うつ病状態のラットモデルを用いた試験ですが、セロトニンやドーパミンの
機能改善は、西洋薬のSSRI(抗不安薬)に近い効果があることを証明しています。
抑肝散加陳皮半夏 頭痛・肩こり 中間管理職の必見漢方薬ー実体験編ー
以前の記事で、抑うつ、イライラ、怒り・のぼせ、パニックを解消する漢方薬を紹介しました。
いわゆるストレスから発生する精神障害の症状ごとに漢方薬をどう使い分けるかを解説しました。
ストレス障害を大きく、交感神経更新系(症状が発作的に現れる)のストレス障害と副腎皮質ホルモン分泌系(症状がつづく)のストレス障害に分類し、さらにそれぞれを、闘争反応タイプと逃走反応タイプ、憂鬱過多タイプと緊張過多タイプに分類し、それぞれの症状にあった漢方薬を紹介しました。
包括的には、ご理解できたかと思いますが、なかなか実際に自分の症状を判断し、漢方薬を選択し、実践するのは難しいと思います。
今回は、友人が営業部長に昇格して、みるみる顔色が悪くなり、笑顔も少なくなり、明らかにストレス障害に一歩足を踏み込んでいるようでした。
首筋や肩が痛いというので、会社の配置薬に葛根湯がありましたので、肩こりに良いという効能表示もありますので、一応はそれを薦めておきました。
確かに、効果はあったようですが飲む頻度が多そうでしたので、麻黄や甘草も入っている漢方薬ですので、常用するには胃腸障害や偽アルドステロン症などの副作用も可能性はありますので、もう少し根本的な原因を解決して、彼の肩や首凝りを改善できないか、模索しておりました。
約1か月ほど彼を観察し来ましたが、やる気は以前よりましているし、ストレス性の胃炎や食欲不振もとくになく、ただいつも首筋を揉んだり、肩を回したりほぐしたいしていたので、昇進による緊張過多からくるストレス症状(怒りやイライラした気分を我慢している、 過緊張による症状である肩こり・頭痛)と判断して、抑肝散加陳皮半夏の服用を薦めました。
7月1日から服用を開始したようですので、経過報告をしていきたいと思います。
目次
抑肝散加陳皮半夏の適応症候
修正:気逆→気鬱の記述ミスです
抑肝散加陳皮半夏の配合生薬の症例
抑肝散加陳皮半夏の配合生薬と効果
柴胡、釣藤鈎 の組合せで、肝気の鬱結により起こる症状(眩暈、耳鳴り、感情の昂りなど)を改善します。
便秘の漢方薬基礎編ー31年度漢方薬・生薬認定薬剤師試験に出題!!
日本生薬学会、日本薬剤師研修センター主催の漢方薬・生薬認定薬剤師の試験
6月9日日曜日、日本生薬学会、日本薬剤師研修センター主催の漢方薬・生薬認定薬剤師の試験を受けてきました。100問中80問は解けたような気がしますが、なんと便秘に有効な漢方薬の問題は、ほぼ全滅してしまいました。
あまりにも多くの人が悩んでいる症候ですので、まさか資格認定試験に出るとは想像だにしていませんでした。
でも、考えてみれば多くの女性や高齢者の方々の深刻な悩みの一つですよね。それにこれぞ漢方薬の得意とする分野ではないかと、、、、、迂闊でした。
そこで今回は、認定試験に基づいて漢方薬による便秘の改善方法についてご報告したいと思います。
実際に、私は防風通聖散をダイエットのために1か月服用の実体験をしていますので、漢方薬の便通効果の実力を実感しています。
今回は便秘の第一選択薬として使用される漢方薬について総括的な解説をしたいと思います。
便秘薬は、大別すると腸のせんどう運動を促進するものと便を柔らかくするものがあります。
腸のせんどう運動を促進するもの
大黄と芒硝という生薬が含まれるものが、このタイプになります。
大黄甘草湯が便秘の第一択薬です。大黄と甘草の2生薬により構成される便秘薬です。
腸の運動を促進する成分のセンノシドを多く含む大黄と、腸の運動を整える甘草という二つの生薬が配合されています。
便秘以外に特に症状がない時は第一選択薬として使用されます。漢方薬は、配合される生薬が少ないほどシャープに効果を得られます。(例:葛根湯<麻黄湯)
桃核承気湯が女性の便秘の第一選択薬です。 この漢方薬は、大黄と芒硝により便秘解消をすると同時に、瘀血(体内での血液の滞留・停滞)の解消に有効な桃仁が含まれているので、月経不順、月経困難、月経時や産後の精神不安などにも効果があります。
【第2類医薬品】「クラシエ」漢方桃核承気湯エキス顆粒 45包
便を柔らかくするもの
大黄と 麻子仁という生薬が含まれるものが、このタイプになります。
麻子仁丸は、慢性(習慣性)便秘で、高齢者や病後の虚弱者に多用されます。大便はコロコロで硬く,兎糞状のことが多い方に使用されます。麻子仁と杏仁が水分の維持をし、腸を潤すことにより排便を促します。
潤腸湯も、高齢者向きの緩和な下剤で兎糞状の便などに使用されます。特徴的なのは、血行を良くする(血虚の改善)地黄と当帰が配合されていることです。
便秘に使用する漢方薬と構成する生薬
大黄甘草湯:大黄、甘草
調胃承気湯:大黄、甘草、芒硝
小承気湯:厚朴、枳実、大黄
大承気湯:厚朴、枳実、大黄、芒硝
桃核承気湯:大黄、甘草、芒硝、桃仁、桂皮
麻子仁丸:麻子仁、大黄、杏実、杏仁、厚朴、芍薬
潤腸湯 : 地黄、 当帰、 黄芩、 枳実、 杏仁、 厚朴、 大黄、 桃仁、 麻子仁、 甘草
大建中湯:山椒、人参、乾姜、膠飴
漢方薬による引き始めの風邪退散ー実体験編ー
漢方薬による風邪退散の実体験編
異常な気候変化(気温や湿度)と体調の維持
皆さん、現在2019年の6月ですが、気温30℃を超えたり、曇りの日が続いたり、めちゃくちゃな状況ですね。北海道も38℃を超える異常事態です。
こんな状況下で、はたして我々の体の調子は健康に保たれるのでしょうか?
専門用語で、ホメオスタシス機能は正常に働くのでしょうか?
ホメオスタシスには、体温の恒常性、免疫の恒常性等がありますが、これらの恒常性が正常に保たれるとは思えないですよね。
周りにこんなに暑い日が続いているのに、咳をしている人、のど枯れしている人を見ませんか?ぼくも薬剤師ですので、よく病院で処方されている薬が効かないんだけとどうしたらよいか相談されますが、クリニックも特効薬は持ってないと答えてます。
こんな時期こそ漢方薬の出番
僕は、漢方を勉強するようになって、この時期の風邪であれば、ほとんど1日から2日で退散させることができるようになりました。
流石に、冬期に蔓延するインフルエンザは、漢方だけでは辛いことになってしまった経験もありますが。ウイルスが元気でとっても強いやつらがいますので。
麻黄湯だけで完治を目指しましたが、熱のせいで軽いパニック症状が出てしまい断念しました。
傷寒論(後漢時代に書かれた中国医学書)の秘術ー六病位による漢方治療
以前の記事で紹介しましたが、漢方では六病位といって病気の進行具体(経過日数)によって六つの段階に分け、段階ごとに有効な漢方薬を選択していく方法があります。
特に風邪については、ウイルスや細菌が、のど、鼻、目などの粘膜に侵入しようとしている、ちょっと侵入したため、免疫反応を開始したばかりの時期を、太陽病期としています。
この時期に漢方薬を飲むと非常に高い確率で、風邪の悪化を防ぐことができると実感しています。
よく健康食品でいわれる個人差がありますのでと申し上げておきますが。笑
さて、前置きが長くなりましたが、私の漢方薬による風邪退散の実体験をご紹介します。
簡単です。チクチク症状が出たらすぐに葛根湯を飲んでください
- のどの奥がチクチクする
- 声が出にくくなる
- 鼻の奥がチクチクする
- 目がチクチクする
見逃しがちな風邪の初期症状 首筋が凝る、痛い
- 首筋が凝る。手で揉むと気持ちがいい。これが意外と見逃しがちの風邪症状です
- 頭痛までいかないけど頭がちょっと痛い
この症状が出た場合も葛根湯を飲みましょう。葛根湯の効果表示に肩こりと書いてありますが、疲労から来る肩こりだけでなく、風邪の初期症状である肩こりや首筋のこりによく効きます。
ちょっと強いウイルスの場合は、関節が痛くなります。痛みもチクチクではなく痛い
この症状は、ちょっと強めのウイルスの侵入と思われます。葛根湯でも十分に効きますが、私の場合は、効果をシャープに出したいのでこのケースでは、麻黄湯の出番となります。
漢方薬は、配合されている生薬の数が少ないほど、効果が強く、早く、シャープに出ると言われています。一度試してみてください。
今回ご紹介した漢方薬は、西洋薬でいう頓服薬ですので、症状が出ているときに飲むようにしてください。体質改善のために飲み続ける漢方薬ではありません。
服用の目安は、1日から2日です。この期間で効かなかったら、西洋薬も併用してください。クリニックには、漢方薬の服用は一応伝えてください。
特に重篤ではありませんが、葛根湯や麻黄湯は、麻黄が入っていますので、胃の不快感や食欲不振、吐き気などを催す副作用、甘草が入っていますので、だるい、血圧上昇、むくみなどの副作用が報告されています。
症状が出たら服用はお休みしましょう。
恒常性(こうじょうせい)ないしはホメオスタシス(希: ὅμοιοστάσις、英: homeostasis)とは、生物および鉱物において、その内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向のことである。
紹介した漢方薬とその構成生薬
麻黄湯
麻黄、杏仁、桂皮、甘草
葛根湯(桂枝湯+麻黄+葛根)
桂皮、芍薬、大棗、生姜、甘草、葛根、麻黄
子作り大作戦 家康の愛した漢方薬 八味地黄丸と女性の味方 当帰芍薬散
僕は、今年の4月で57歳、妻は40歳となりました。妻も私もそろそろ頑張らないと子宝を授かる機会を逸ししていまう年齢となりました。
そこで、私が1年間勉強してきた漢方の知識を最大限生かして、7月懐妊を目指して頑張ろうと思います。
これまで、体質改善のために、いろいろな漢方薬を実践してきましたが、大事な本番です。
目次
体質改善のために自ら試してきた漢方薬
胃腸強化による体力強化
六君子湯:最近椅子に長く座っていると胃酸が逆流するようになってきました。胃の入り口が緩んできているからだと思ったので、この漢方薬を服用しました。
逆流性食道炎には、半夏瀉心湯の方が、半夏が入っているので効果はあるかもしれません。
精神疲労、身体疲労回復のために試した漢方薬
人参養栄湯:漢方的な表現になりますが、気虚、津虚、血虚のどのような症候の人にも万能に効き、疲労回復効果に優れているという漢方薬になります。
最近の天候(気温)の上下が酷く、なかなか疲れが取れない、足が冷えている、のぼせがある、落ち着かないなどの症状が出ていたので、この万能薬を服用しました。効果の実感は中々短期では得られませんでしたが。
体脂肪を減らすために試した漢方薬
防風通聖散:小林製薬のナイシトールが有名ですが、この年になると基礎代謝量も減少するので、この漢方薬を服用しました。
名前の通り、主に風邪を防ぐ漢方薬で、防風、麻黄、荊芥、桔梗、石膏、滑石などの生薬が配合されています。ただ、大黄や芒硝が入っているため、便通は非常によくなりました。
僕の場合やや下痢気味となりましたが、軽い風邪による微熱や関節痛にも効きましたし、便通の良いことは間接的に体脂肪低減に繋がったかなと思います。
さて、本題に入りたいと思います。
冒頭でも述べましたが、 僕は、今年の4月で57歳、妻は40歳となりました。妻も私もそろそろ頑張らないと子宝を授かる機会を逸ししていまう年齢となりました。
子宝が授かるためには、ぼくも嫁もその体質を作らなければなりません。約1年間、漢方薬剤師を目指して勉強してきた集大成を、自身の大事業(子小作り)のために生かしたいと思います
男性側の子作り体質の構築
ずばり、下半身を鍛えなければなりません。この年になると、ややED気味であることは認めざるをえません。また、何よりも元気な精液が必要です。
下半身のことだけを考えていてはいけません。精神的にも安定でなければなりません。ストレスに強い体質を作ることが必要です。
また、免疫力を上げることにより、ウイルスによる攻撃を撃退しないればなりません。以上の難関を全てクリアできる可能性ある漢方薬は、やはり徳川家康が愛した八身丸(腎気丸)、八味地黄色丸が最も有効ではないかと思います。
また、君薬である地黄は、胃腸症状が出る可能性があるので、前述の人参湯や六君子湯などの併用もしていきたいと思います。
八味地黄丸は、昔から“腎虚”に対して用いられてきました。漢方でいう腎とは、現代医学でいう腎臓だけでなく、副腎、膀胱、そして生殖器を含めた総称です。
地黄、山薬、山茱萸の組み合わせにより、泌尿、生殖器の失調による全身の倦怠感や口渇、足腰のだるさ、のぼせ、腰痛、視力の減退、耳鳴りなどに用いる。
女性側の子作り体質の構築
女性はなんといっても元気な卵子が必要です。また、20代では、切迫流産の確立が10%前後ですが、40台になると40%まで上がってしまうというデータがあります。
受精後も元気に細胞分裂する卵子が必要となります。もっとも元気な受精卵とは、男性の正常な遺伝子も必要となりますが。
一番婦人薬で有名で、妊娠前に有効である当帰芍薬散を妻は服用を開始しました。彼女も医療従事者ですので、今後の体質の変化についてプロの意見も聞けるかと思います。当帰芍薬散は、エストロゲン、プロゲステロンの分泌増加の論文も報告されています。
その他、桂枝茯苓丸や加味逍遥散が、婦人用漢方薬として有名ですが、妊娠目前または妊婦には、些細な副作用もあってはなりません。
柴胡剤(間質性肺炎の副作用報告有り)の配合されている加味逍遥散や桃仁や牡丹皮などの駆瘀血剤(月経不順には最適)が配合されいる桂枝茯苓丸は、今回は使用せず、これからは安定期に浮腫みや腹部異常、精神不安(イライラなど)などが発生したばあには勧めてみたいと思います。
漢方薬(妊婦への投与)副作用
https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/17.pdf
風邪の特効薬である漢方薬の正しい選び方
風邪(急性上気道炎)の特効薬である漢方薬の選び方
風邪を引いたときに、葛根湯や麻黄湯がしばしば病院で処方されます。
しかし、どうも効きません。なので80%以上がウイルス由来の風邪なのに、抗生物質をもらったり、熱や痛みにすぐ効くロキソニン等の解熱鎮痛剤を飲んでしまいませんか?
当然、これらを服用しても風邪の軽い状態で止まることはなく、咳・痰は出る、熱が出て体はだるい、喉がひどく痛い、といった状態まで悪化しその後、本当の完治がやってきます。ほとんど自然治癒です。
当然、なんの薬も飲まず風邪が治るまで待つのは、これもなかなか耐えられることではありませんので、服薬無しというわけにはいきませんが。
今回の記事では、葛根湯や麻黄湯などで漢方薬の正しい飲み方をご紹介します。漢方薬を飲むタイミングや漢方薬の種類を適切に選択すれば、風邪の軽い症状(ちょっとだるいな、ちょっと喉がいたいな、鼻みずがでるな)、漢方ではほぼ未病の状態ですが、風邪を退散させることができるかもしれません。
僕の経験では、たとえ悪化しても漢方薬は、風邪を長引かせないと感じています。
目次
初期(太陽病)の風邪に適応となる3方剤
風邪を引いて2から3日の間を、漢方では太陽病といいます。まだ元気のある風邪という意味でしょうか。
太陽病期の自覚症状
頭痛、悪寒、発熱、項背部痛、浮脈
※悪寒:体がゾクゾクしたり、ガタガタ震えるような病的な寒け(さむけ)のことです。
※項背部痛:項(うなじ)から背中にかけての痛みです。
この時期には、麻黄湯、葛根湯、桂枝湯を使い分けます。使い分けのポイントは、汗が出ているかどうかです。
桂枝湯:自汗有、肩こりなし
葛根湯:自汗無、肩こり・項背部のこり
麻黄湯:自汗無、関節痛・せき・喘鳴
※喘鳴:呼吸する空気が気管を通る時、ぜいぜいと雑音を発すること
初期(太陽病)から4から5日経過(少陽病)へ病態は変化する
風邪は初期(漢方では太陽病期といいます)から、2、3日経過すると症状が変化していきます。下記のような症状(漢方では、少陽病期といいます)が出てきたら、漢方薬を変更する必要があります。
下記の漢方薬を症状に合わせて選択しますが、柴胡剤が中心となります。
小陽病期の自覚症状
- 往来寒熱
- 胸脇苦満(ろっ骨弓下の張った痛み)
- 口苦
- 口乾
- はき気
- 食欲不振などがあらわれます。
小柴胡湯:第一選択薬です
柴胡桂枝湯:太陽病が併存する
小柴胡湯加桔梗石膏:咽喉に炎症が強い
柴朴湯:咳痰・喘鳴を伴う
柴苓湯:下痢・腹痛を伴う
小児に多い鼻かぜと咳の風邪
子供も基本的には、成人と同じ漢方薬が適用されますが、下記の5種類の漢方薬を常備しておくと良いでしょう。
麻黄湯、葛根湯:風邪の初期には
小青竜湯:くしゃみ・鼻水が出てきたら
麻杏甘石湯 (五虎湯):咳が出てきたら
紹介した漢方薬とその構成生薬
桂枝湯
桂枝、芍薬、大棗、生姜、甘草
麻黄湯
麻黄、杏仁、桂皮、甘草
葛根湯(桂枝湯+麻黄+葛根)
桂皮、芍薬、大棗、生姜、甘草、葛根、麻黄
小柴胡湯
柴胡、黄芩、半夏、生姜、大棗、人参、甘草
長引く慢性の咳・痰に効く12種の漢方薬と使い方
慢性の咳・痰に対する漢方薬治療
風邪は、風邪薬を飲んで、しばらく我慢すれば完治します。例え、インフルエンザでも、抗ウイルス剤を飲めば、数日で熱は下がりほとんどの風の症候は消失して、部屋から外に出たくなるほど治ってしまいます。しかし、これが慢性化すると厄介です。耳鼻咽喉科に行って様々な薬を頂きますが、相当の長い期間咳が続いたり、痰が絡み続けます。ぼくは煙草を十数年吸っていましたが、どうも軽度の風症状(熱っぽい)や痰や咳が続くので、CT検査をしてもらったら、肺気腫で肺胞の上部が死んでいる?と言われました。その後煙草を辞めてから風邪症状や咳はなくなりましたが、しばらくは痰が絡み続けました。今は、漢方を勉強し始めて約1年になりますが、喫煙後に絡み続けた痰もなくりました。今回の記事では、慢性の咳や痰に有効な漢方薬を紹介します。是非試してみてください。
慢性の咳・痰に効く12方剤
咳・痰に効く12方剤を紹介ます。そしてその使い分けについて説明します。
疾病・症候
風邪の遷延化、慢性気管支炎、気管支拡張症、非定型好酸菌症、肺気腫、気管支喘息、肺線維症
⇓
適用漢方薬
麦門冬湯、麻杏甘石湯、五虎湯、参蘇飲、柴陥湯、神秘湯、清肺湯、竹筎温胆湯、滋陰至宝湯、 滋陰降火湯、 柴朴湯、 人参養栄湯、苓甘姜味辛夏仁湯
12方剤の使い分けは、咳や痰の種類やその人の体質で使い分けをします。種類や体質を下記に列記しました。
咳の虚実・乾湿
力のない咳(虚証とは体力なし)
激しい咳(実証とは体力あり)
湿性咳嗽(痰を絡む咳)
乾性咳嗽(空咳)
痰の寒熱
透明・水様の痰(寒がり:寒証)
黄色・粘稠の痰(暑がり:熱証)
激しい湿性咳嗽 柴陥湯、柴朴湯、竹筎温胆湯
- 柴陥湯:体力中等度の人で,強い咳が出て,痰が切れにくく,胸痛する場合に用いる
- 柴朴湯:体力中等度の人で,咳嗽, 喘鳴,精神不安,抑うつ傾向,食欲不振,全身倦怠感などを訴える 場合に用いる
- 竹筎温胆湯:比較的体力の低下した人で,感冒などで発熱が長びき, あるいは解熱後,咳が出て痰が多 く,不眠を訴える場合に用いる
激しい乾性咳嗽 麻杏甘石湯、神秘湯、麦門冬湯
- 麻杏甘石湯:比較的体力のある人で,咳嗽が強く,口渇,自然発汗, 熱感などがあり,喘鳴,呼吸困難 などを訴える場合に用いる
- 神秘湯:体力中等度あるいはそれ以上の人で,呼吸困難を主訴とし, 抑うつ傾向を呈する場合に用いる
- 麦門冬湯:体力中等度もしくはそれ以下の人の激しい咳嗽で,発作性に咳が頻発して顔面紅潮する場合に用いる
力のない湿性咳嗽 苓甘姜味辛夏仁湯、参蘇飲、清肺湯
- 苓甘姜味辛夏仁湯: 比較的体力が低下し、冷え症で貧血傾向にある人の、喘鳴、咳嗽、水様性の喀痰、水様性鼻汁などを呈する場合に用いる
- 参蘇飲:胃腸虚弱な人の感冒で、すでに数日を経て長びき、頭痛、発熱、咳嗽、 喀痰などのある場合に用いる
- 清肺湯:比較的体力の低下した人で、粘稠で切れにくい痰が多く、咳嗽が遷延化 した場合に用いる
力のない乾性咳嗽 人参養栄湯、滋陰至宝湯、滋陰降火湯
- 人参養栄湯:病後、術後、あるいは慢性疾患などで疲労衰弱している人で、微熱、悪寒、咳嗽などを伴う場合に用いる
- 滋陰至宝湯:体力が低下した人の慢性に経過した咳嗽に用いる。痰が咽喉にからんで気になると訴える場合に用いる
- 滋陰降火湯:体力が低下した人で、夕方 あるいは夜間に咳が頻発し,痰は粘稠で 切れにくいが量は少ない場合に用いる
風邪で乾性咳嗽が遷延するときは、麦門冬湯
通常、空咳が長引く場合、麦門冬湯を使用します。しかし、麦門冬湯で効果がない場合(後咽頭壁が乾燥している場合無効)、滋陰降火湯を使用します。
12種の漢方薬とその構成生薬
柴朴湯
半夏厚朴湯(抑うつ)と小柴胡湯(小陽期の風邪)の合剤です。
半夏厚朴湯:半夏、生姜、茯苓、厚朴、蘇葉
小柴胡湯:柴胡、半夏、生姜、または乾姜、黄芩、大棗、人参、甘草
神秘湯
麻黄、杏仁、陳皮、甘草、柴胡、蘇葉、厚朴
消化器疾患・胃腸障害への漢方治療の秘訣
消化器疾患に対する漢方薬治療の秘訣
令和元年となりました。気持ちも新たに漢方薬治療の習得のために、大型連休中も精進しております。
今回も喜多先生のプライマリケア漢方の講義から得た知識をもとに、漢方薬の疾病や体質の改善に有効な適用方法ついて解説したいと思います。
今回の記事は、過去にも触れていますが、胃腸障害を改善できる漢方薬治療について、パワーアップしてご紹介したいと思います。
喜多先生の「プライマリケケア漢方」と「好きになる漢方治療」を2冊を購入すると、Dr喜多の「プライマリケア漢方」講座3週間マスターコースの講演のすべてを視聴することができます。これらは医師のために書かれた著書です。漢方医学の考え方やその特質を理解したうえで、漢方を日常の臨床に取り入れていきたいとうプライマリケア医師たちの希望に答えるために著されたものですが、我々薬剤師やそれらを適用される方々にも正しい漢方薬の効能や正しい使用法を理解するうえで、非常に有益なものであると思います。
目次
食欲不振の第一選択薬:六君子湯
六君子湯は、気虚の改善に使用される方剤ですが、特に下記のような胃腸障害の症候の第一選択薬として適用されます。
• 食欲の低下
• 胃もたれ
• 消化不良
• 軟便傾向
• 下痢しやすい
なお、六君子湯には、多くの臨床疫学的なエビデンスやグレリンの分泌を更新するといった基礎実験的なエビデンスも多くあります。
基礎実験エビデンス
消化管運動促進作用(村国均,他. 日本東洋医学雑誌 43(2):255-262, 1992)
胃排泄能促進作用(Kido T, et al. J Pharmacol Sci 98(2):161-167, 2005)
胃適応性弛緩に対する作用(Arakawa T, et al. Drugs Exp Clin Res 25(5):207-210
1999;Hayakawa T, et al. Drugs Exp Clin Res 25(5):211-218, 1999)
グレリンに対する作用(Takeda H, et al. Gastroenterology 134(7):2004-2013, 2008)
六君子湯の次の一手:意欲低下を伴う場合
食欲不振が、精神障害や全身倦怠感が引き金になっている場合は、六君子湯よりも他の補気剤が適用されます。ストレスで食欲がなくなったりしますよね。
- 食欲不振が主訴
食欲不振が一番の主訴の場合は、六君子湯が適用です。 - 全身倦怠感のために食欲がわかない
体が疲れて、元気ないために食欲がわかない場合は、補中益気湯が適用です。 - 憂うつ気分のため食欲がわかない 気鬱(抑うつや不安感)のために、食欲不振の場合は、加味帰脾湯が選択されます。
※加味帰脾湯の構成生薬
人参 、白朮、茯苓、酸棗仁、竜眼肉、黄耆、当帰、遠志、柴胡、山梔子、甘草、大棗、生姜、牡丹皮
六君子湯の次の一手:下痢傾向を伴う場合
六君子湯で食欲不振や下痢などの気虚の症候が改善されますが、熱証(暑がり)か寒証(寒がり、冷え性)によって、下記の方剤が六君子湯よりも効果が期待できることがあります。
- やや熱証(暑がり)半夏瀉心湯を使用・・・げっぷ、胸やけなどの逆流型の胃炎
- やや寒証(冷え性)人参湯を使用
冷えを伴う慢性胃腸障害の第一選択薬は人参湯、下痢気味場合は、真武湯、便秘気味の場合は、大建中湯が適用されることは下記の記事で紹介しました。
IBS(過敏性腸症候群)の第一選択薬:桂枝加芍薬湯
過敏性腸症候群の第一選択薬は、桂枝加芍薬湯です。主要生薬は芍薬であり、過敏性腸症候群で大腸の蠕動運動が不規則で調整がうまくいかないときに有効です。
芍薬(君薬)
- 主な含有成分
モノテルペノイド配糖体:ペオニフロリン - 主な薬理作用
鎮静・鎮痛・鎮痙・抗炎症・血圧降下・血管拡張・平滑筋弛緩・胃腸運動促進作用 - 主な薬効
1)滋養して,血虚の病態を改善する
2)腹痛や筋肉痛,痙攣性の痛みを改善する
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IBS(過敏性腸症候群)の下痢には啓脾湯
下痢に適用される漢方薬は、六君子湯、半夏瀉心湯、人参湯、真武湯などを紹介してきましたが、これらのどの方剤でも効果がない場合、過敏性腸症候群の要因を持っている可能性があります。過敏性腸症候群の下痢の場合、啓脾湯が適用されます。
啓脾湯は、気虚、水滞の症候以外に、ストレスの要因が付加された下痢(過敏性腸症候群の下痢)に適用されます。
- 気虚による疲れやすい、体がだるい、気力がない等の症候がある
- 気虚よる消化吸収障害と水滞による水分代謝障害により、腹部不快感、 慢性の下痢、 消化不良便の症候がある
- ストレスによる自律神経の失調により神経症、精神不安、 不定愁訴が発生し、水滞や気虚同様に、腹部不快感、慢性の下痢、消化不良便の症候がある
※啓脾湯
人参、茯苓、白朮、蓮肉、山薬、山査子、陳皮、沢瀉、大棗、生姜、甘草
※六君子湯
人参、茯苓、白朮、半夏、陳皮、大棗、生姜、甘草
便秘に対する漢方治療
通常の便秘の治療には、大黄という生薬が含まれている方剤を使用します。
基本的な瀉下剤
- 大黄甘草湯
習慣性の便秘で,便秘以外には特別の症状がないもの。 体力中等度の人を中心に広く用いられる。 - 桂枝加芍薬湯大黄湯
便秘して,腹部が膨満しているが強い下剤を用いると 腹痛を起こすなどの排便異常があるもの。しばしば腹直筋の緊張を認める。 - 大承気湯
へそを中心に腹部が堅く緊張していて,膨満感が強く便秘するもの。不安,不眠,興奮,のぼせなど精神神経症状を伴うことが多い。 - 麻子仁丸
習慣性便秘に用いられる処方で,とくに老人,病後の 虚弱者に多用する。大便はコロコロで硬く,兎糞状の ことが多い。
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手・足・腰・肩・首・指の関節痛を漢方薬で改善
関節痛に有効な漢方治療・漢方薬
高齢化にともない、四肢関節痛や腰痛は多くの人々の深刻な悩みとなっています。
痛みを抱えながら生きていくことは、QOL(Quality of Life 生活の快適性)を、大きく損なうことになると思います。人生100年を、漢方により快適・健康かつ美しく生きることをテーマにしている本ブログでは見逃せないテーマです。
今年57歳なるぼくもストレッチ、スクワット、散歩を取り入れたり、月に1回は針灸マッサージに通うことにより、足腰のみならず心身の強化・維持に努めていますが、是非これを機会に漢方を研究し、QOLの向上の秘策にしたいと思います。
目次
関節痛とは
変形性膝関節症の記事で紹介しましたが、膝に限らず関節痛の漢方薬の選択は、どの関節も概ね構造は同じであるため、肩、腰、足の指、手の指、肘、皆同じ理論で選択されます。
関節痛の原因は、後ほど説明しますが、漢方の得意とするものは、
- 冷えによる血行の低下
- 滑液の異常分泌による浮腫み
- 消耗した軟骨や滑膜の再生能力の低下
冷えによって関節痛が悪化するのは、冷えにより血行が悪くなり、周辺の筋肉が硬直し、腰やひざ、肩といった、よく動かす部位には、いつも以上に大きな負担がかかります。通常は、骨と骨の間には軟骨があり、これがクッションの役割を果たしているため痛みを感じないのですが、日頃から仕事やスポーツで必要以上に体を動かしている方や、加齢によっても軟骨がすり減ってしまうため、冷えによって関節痛を引き起こす率が高くなります。
浮腫み(関節水腫)は、関節の軟骨がすり減って破壊され、関節包の内側を被っている滑膜(かつまく)という組織にも炎症が起こり、ここで産出されている滑液(関節液)が異常に産出されて貯留するようになること、これが水が貯まった状態です。
貯留した関節液は炎症の結果生じたものなので、正常の関節液とは組成が違うため、残された関節軟骨へも悪影響を与えます。
軟骨や滑膜の再生能力の低下は、血液生産、循環、組織での利用がうまくいかない状態で、皮膚疾患、筋肉痛、神経痛、関節疾患を引き起こします。血液は、肝臓で製造されたタンパクやアミノ酸を、身体部位に運ぶことが一つの機能ですが、これがうまく機能しない場合、関節の軟骨・滑膜の再生・修復ができなくなります。
関節痛の原因
- 加齢による変化、老化により、関節軟骨が老化してすり減ると加重の衝撃が吸収されにくくなって痛む→ 変形性膝関節症、変形性股関節症、肩関節周囲炎(五十肩)など
- 関節の炎症、細菌感染や自己免疫疾患→ 化膿性関節炎、関節リウマチなど
- 打撲・捻挫、転んだり、関節をひねったり、強打することで起こる
- スポーツ障害、スポーツで特定の関節を酷使するために起こる
- 骨粗鬆症、関節の周囲の骨がつぶれることなどで、関節に障害が出る
- 先天的なもの
適用される漢方薬
変形性膝関節症の記事でご紹介した漢方薬が有効です。
急性の関節痛
寒い季節になると膝が痛くなり、お風呂に入ると楽になる。 膝には水はたまってないし、幹部に熱はない。このような方には、桂枝加苓朮附湯が使用されます。
若いころにスポーツをしていたりして、年をとって膝に水がたまる、膝にさわると熱を感じ、炎症がある。このような方には、越婢加朮湯が使用されます。
四肢関節(両手両足の関節)に、浮腫(むくみ)と疼痛(痛み)があるが、熱はない、非ステロイド系の抗炎症剤が無効であり、冷えが強く胃腸の調子が悪い。入浴すると楽になる。このような方には、第一選択薬の防己黄耆湯を使用します。
慢性の関節痛
関節痛が長期に続く(慢性)関節痛には、桂枝加苓朮附湯、防己黄耆湯、越婢加朮湯効果ありません。
冷えの症状があり、皮膚の乾燥やこむら返り、目の乾燥があり、痺れがある人には、大防風湯が使用されます。
特に冷えは無く、むくみがある関節痛には、疎経活血湯が使用されます
幹部に炎症・熱、むくみが有る関節症には、薏苡仁湯(ヨクイニン、ハトムギ)が適用されます。
【第2類医薬品】越婢加朮湯350錠
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抑うつ、イライラ、怒り・のぼせ、パニックを解消する漢方薬
交感神経更新系のストレス障害には、黄連解毒湯、桂枝加竜骨牡蠣湯
前回の記事で、漢方では、気虚(元気がない、食欲がない、免疫力の低下・風邪ひきやすい)に効果的な漢方薬をご紹介しました。気とは生命エネルギーであり、そのエネルギーを利用して、神気(運動・精神機能)、胃気(消化・吸収機能)、衛気(免疫力機能)のパワーを生み出しています
今回は、その中で、神気の精神機能の失調(ストレス障害)の漢方薬治療について紹介します。ストレスには、交感神経更新系と副腎皮質ホルモン分泌系の2種類があることが、キャノン、セリア等により提唱されています。漢方では、前者を気逆、後者を気鬱との症候としてとらえています。
目次
交感神経更新系のストレスには、闘争型と逃走型がある
闘争反応タイプ
怒り、怒り安い(易怒性)、焦燥感、顔面紅潮・のぼせ、血圧上昇、不眠には、
黄連解毒湯、三黄瀉心湯です。
※ここでのぼせは、冷えのぼせではなく、熱盛ののぼせです。
逃走反応タイプ
恐れ、パニック発作、不安、動悸発作、腹部の動悸、手足の発汗には、
桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯です。
副腎皮質ホルモン分泌系のストレス障害には、抑肝散加陳皮半夏、半夏厚朴湯
副腎皮質ホルモン系のストレスは、憂慮過多と緊張過多の2種類がある
憂慮過多のタイプ
悲しみを我慢、憂うつな気分、訴えが執拗、心気症的、胃気失調を認めるには、
半夏厚朴湯または香蘇散を適用する
特に喉の閉塞感や異物感を訴える場合は、半夏厚朴湯が使用され、胃腸虚弱で食欲不振には香蘇散が使用されます。
緊張過多のタイプ
怒りを我慢、イライラした気分、 肩こり・頭痛、過緊張による症状、肝気鬱結を認めるには、
抑肝散加陳皮半夏または四逆散を適用する。
修正:気逆→気鬱の記述ミスです。
紹介した漢方薬と構成生薬
黄連解毒湯の配合生薬は、全て清熱効果のあるものです。類似漢方薬である三黄瀉心湯も全て清熱効果のある生薬ですが、大黄は、瀉下清熱、いわゆる下剤ですので便秘気味の人に使用されます。
黄連解毒湯
黄連、黄柏、黄芩、山梔子
三黄瀉心湯
黄連、黄芩、大黄
半夏厚朴湯
半夏、茯苓、厚朴、蘇葉、生姜
香蘇散
香附子、生姜、陳皮、蘇葉、甘草
抑肝散加陳皮半夏
釣藤鈎、柴胡、川芎、当帰、陳皮、半夏、茯苓、蒼朮、甘草、
四逆散
甘草、乾姜、附子
【第2類医薬品】「クラシエ」漢方黄連解毒湯エキス顆粒 45包
【第2類医薬品】三黄瀉心湯 エキス細粒26 2.0g×30包
【第2類医薬品】「クラシエ」漢方桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒 45包
【第2類医薬品】「クラシエ」漢方柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒 45包
【第2類医薬品】「クラシエ」漢方半夏厚朴湯エキス顆粒 45包
【第2類医薬品】抑肝散加陳皮半夏エキス顆粒クラシエ 24包 ×2
めまい・頭痛の漢方治療の秘訣(補足)
めまいに対する3大利水剤とは、五苓散、苓桂朮甘湯、神武湯
めまいの解消は、冷えと同様に漢方のもっとも得意とする分野です。しかし、めまいと一言でいっても、様々な症候、病態があり、それぞれの病態に適応した漢方薬を選択にしなればなりません。前回の記事は、水滞(水毒・有毒物質の体内で停滞)が主な原因のめまいに適用される漢方薬を紹介しましたが、今回はもう少し踏み込んで、めまいの種類や他の症候を併発している人に適用される漢方薬をご紹介します。
目次
回転性のめまいには五苓散
回転性めまい・激しいめまい
水滞に口渇・尿不利・自汗の症候があること。
非回転性のめまいには、苓桂朮甘湯
非回転性めまい・立ちくらみ(起立性低血圧)
水滞に気虚と気逆を伴う
浮遊感・動揺感・斜行感のあるめまいには、神武湯
浮遊感・動揺感・斜行感
水滞に気虚と冷えを伴う
その他利水剤
気逆、気鬱を伴うめまい
水滞+気逆:半夏白朮天麻湯
水滞+気鬱:半夏厚朴湯
※気逆や気鬱は、精神障害的な症候ですが、次回の記事でご紹介します。
今回紹介した漢方薬と生薬
五苓散
猪苓:利水滲湿、清熱
沢瀉:利水滲湿、清熱
茯苓:利水滲湿、健脾和中
白朮:燥湿利水、補脾益気
桂皮:通用利水、散寒止痛
真武湯
白朮:燥湿利水、補脾益気
附子:補陽温腎、散寒止痛
生姜:温中止嘔、解表散寒
芍薬:和血通脈、緩急止痛
引用文献:好きになる漢方医学 喜多敏明著 千葉大学環境健康フィールド科学センター
漢方薬(利水剤)の有効なめまい・頭痛 五苓散、苓桂朮甘湯、当帰芍薬散
めまいの漢方薬は、五苓散、苓桂朮甘湯、当帰芍薬散
今回は、有毒水の体内での停滞、特に漢方でいう水滞(水毒・有害物質の停滞)によりめまいが起こる原因と特にめまいの改善方法を紹介したいと思います。
めまい発生の原因を下記紹介しいますが、中枢性のめまい以外は(病院に即いきましょうう)、漢方を試してみる価値はあります。
目次
めまいの発生原因と種類
めまいは、回転性、非回転性、末梢性、中枢性など様々に分類されますが、下記のメニエール、起立性調節障害などは、水滞が関与している症例(赤字)が多い。
回転性のめまい(ぐるぐる)
末梢性のめまい→内耳や前庭神経に異常→メニエール病、良性発作性頭位めまい
中枢性のめまい→脳幹、小脳に異常→脳腫瘍、脳血管障害
非回転性のめまい(ふらふら)
自律神経障害、起立性調節障害、代謝内分泌障害、アレルギー性疾患、婦人科的疾患・更年期障害(瘀血)、心身症・不安神経症(気鬱)
めいまいの適用される代表的な利水剤
五苓散
・めまい、メニエール、頭痛、浮腫
・胃もたれ、消化不良、吐気、嘔吐、胃部振水音、腹鳴、軟便・下痢
・尿量、尿回数の異常、ネフローゼ、
・口渇、尿不利、自汗
めまいに適用される五苓散類似薬(1)
苓桂朮甘湯
・めまい、メニエール、頭痛、浮腫
・起立性低血圧
・ネフローゼ
・神経質、ノイローゼ
・動悸、息切れ
めまいに適用される五苓散類似薬(2)
当帰芍薬散
水滞の症候と血虚の諸侯の両方を併せ持つ症候
・めまい、頭痛、頭重、浮腫、
・動悸
水滞の症状
- 脳室・内耳:めまい、頭痛
- 鼻腔・気道:頭部:鼻汁、喀痰(痰をはくこと)
- 下肢:浮腫、関節水腫
- 胃腸:消化器症状
- 腎臓・膀胱:尿量、尿回数異常
- その他:手のこわばり
津虚の症状
- 全身:微熱、夕方以降の微熱、寝汗
- 精神:ソワソワ、イライラ、神経過敏
- 頭部:目が乾く、口が乾く、耳鳴り、顔が赤い、のぼせ・ほてり、舌は赤くコケがない
- 四肢(手足):関節が動かしにくい
- 皮膚:肌のかさかさ・乾燥
- その他:空咳、動悸、尿量が少ない、便秘(コロコロ)
血虚の症状
- 全身:疲れやすい、体がだるい,体重減少,貧血、
- 精神:物忘れ、集中できない、不眠
- 頭部: 顔色が悪い,めまい,立ちくらみ、髪にツヤがなく枝毛が多い、白髪、抜け毛、かすみ目、疲れ目、口が渇く
- 四肢(手足):手足のしびれ、筋肉のけいれん、こむら返り、筋肉量減少
- 皮膚:皮膚のかさかさ、肌荒れや小ジワが気になる、爪が薄く折れやすい
- その他:生理が遅れ気味で経血量が少ない、動悸、息切れ
腎(五臓六腑)と水滞と津虚
腎の働きは、津液・浄水(リン、ナトリウム、カリウムなどの無機資源)を全身に送り出し、全身から帰ってくる汚水・水毒(有害物質)を浄化し尿に排泄します。
津虚
津液・浄水の不足
水滞
汚水・水毒などの有毒物質は、尿、痰や胃酸として対外に排出されますが、水滞は、これらの排出に障害が生じておこる症候です。
- 膀胱より尿
- 胃か胃酸(胃がむかむする、水が溜まったいる)
- 気道から痰(異常な痰が出たりする)
- 皮膚から汗(粘った気持ちの悪い汗、シャツが黄色くなったりする)
今回紹介した漢方薬と生薬
五苓散
猪苓:利水滲湿、清熱
沢瀉:利水滲湿、清熱
茯苓:利水滲湿、健脾和中
白朮:燥湿利水、補脾益気
桂皮:通用利水、散寒止痛
苓桂朮甘湯
茯苓:利水滲湿、健脾和中
白朮:燥湿利水、補脾益気
桂皮:通用利水、散寒止痛
甘草:脾胃保護、薬性緩和
当帰芍薬散
茯苓:利水滲湿、健脾和中
白朮:燥湿利水、補脾益気
沢瀉:利水滲湿、清熱
当帰:補血調整、静寒止痛
芍薬:和血通脈、緩急止痛
川芎:活気行気、祛風止痛
引用文献:好きになる漢方医学 喜多敏明著 千葉大学環境健康フィールド科学センター
シミ・肝斑・目の下のくまの改善に、二大駆瘀血剤(桂枝茯苓丸と桃核承気湯)
シミ・肝斑・目の下のくまには、桂枝茯苓丸、桃核承気湯
今回は、シミ、目の下のくま、肝斑の改善に有効な2大漢方薬を紹介します。
シミ、肝斑、目の下のくまは、男性はもとより、多くの女性の悩みのタネではないでしょうか?特に肝斑の発生比率は、90%以上が女性のようです。
以前の記事で、肌荒れの起こる体質は、血の生産、血の循環、血の皮膚組織での利用がうまくできない血虚や水分の不足(津虚)の体質の人におこりやすいことを説明しましたが、実は、シミ、肝斑、くまも血の異常によりおこる症状です。
目次
シミ、肝斑、目の下のくまの改善に適した漢方薬
顔面のシミ、肝斑、くまは、瘀血が原因の可能性があります。
瘀血の症状とは下記のようなものですが、瘀血とは肝の異常・障害により発生するもので、肝臓での解毒や浄化が不十分となり、血液中の有害物質(血毒)の体内での蓄積により出現するものです。
瘀血の病態を治療するには、末梢循環系の血液循環を改善すると同時に、女性ホルモンのバランスを是正し、血毒の排泄を促進する漢方薬が適用されます。
下記の漢方薬は、駆瘀血剤として有名であり、月経痛、月経不順にも適した処方です。
桂枝茯苓丸、桃核承気湯
駆瘀血生薬である桃仁、牡丹皮が含まれており、桃核承気湯には、大黄が含まれており、大黄の瀉下作用(下剤)によって血毒の排泄を促す効果もあります。便秘のある人には、桃核承気湯が使用されます。
瘀血の症状
- 全身:冷えがある、ほてり、発汗、筋肉の凝りや痛み、
- 精神:各種精神症状(ときに発狂状態)
- 頭部:目にクマができる、にきび、シミ、肝斑、口唇・歯肉・舌が暗紫赤色、
- 皮膚:湿疹、蕁麻疹、日焼けや傷跡が消えない
- 腹部:下腹部圧痛
- その他:生理痛、レバー状の塊がある、経血がどす黒い
血虚の症状
- 全身:疲れやすい,体がだるい,体重減少,貧血、
- 精神:物忘れ、集中できない、不眠
- 頭部: 顔色が悪い,めまい,立ちくらみ、髪にツヤがなく枝毛が多い、白髪、抜け毛、かすみ目、疲れ目、口が渇く
- 四肢(手足):手足のしびれ、筋肉のけいれん、こむら返り、筋肉量減少
- 皮膚:皮膚のかさかさ、肌荒れや小ジワが気になる、爪が薄く折れやすい
- その他:生理が遅れ気味で経血量が少ない、動悸、息切れ
津虚の症状
- 全身:微熱、夕方以降の微熱、寝汗
- 精神:ソワソワ、イライラ、神経過敏
- 頭部:目が乾く、口が乾く、耳鳴り、顔が赤い、のぼせ・ほてり、舌は赤くコケがない
- 四肢(手足):関節が動かしにくい
- 皮膚:肌のかさかさ・乾燥
- その他:空咳、動悸、尿量が少ない、便秘(コロコロ)
肝(五臓六腑)と血虚と瘀血
血の生産、運搬、解毒は、五臓の中の肝の働きです。肝の働きに障害が発生した時に、血虚、瘀血などの症状がでます。
血虚
- 肝での血の産生の障害
- 運搬の傷害
- 利用の傷害
瘀血
- 血毒が過剰生産
- 血毒が体内に停滞している
- 血毒が肝で解毒できない
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今回紹介した漢方薬と生薬
桂枝茯苓丸
牡丹皮、桃仁、芍薬、茯苓、桂皮
牡丹皮
駆瘀血(くおけつ)作用があり、消炎・鎮静・鎮痛、婦人病や下腹部、下肢、腰部の化膿症に用いられる薬方に配合される。
桃仁
駆瘀血(くおけつ)作用があり、婦人薬に配合される。潤腸(じゅんちょう)作用があり、緩和な便秘薬に配合される。
桃核承気湯
大黄、芒硝、桃仁、桂皮、甘草
大黄
駆瘀血(おけつ)作用があり、便秘、胸満、腹満、腹痛、利尿異常、黄疸などを治する目的で薬方に配合される。
引用文献:好きになる漢方医学 喜多敏明著 千葉大学環境健康フィールド科学センター
漢方薬の歴史
漢方は、日本の伝統医学
目次
日本での漢方の確立
漢方は、中国から伝わったものですが、日本の伝統医学です。5世紀頃に、中国または朝鮮半島経由で伝来した医学が、その後1400年以上かけて日本で独自の発展を遂げたものです。
中国起源の伝統医学は、中国では中国では「中医学」、韓国では「韓医学」と呼ばれており、起源は同じながら、漢方とは異なった医学体系を形成しています。
歴史を遡れば、漢方という呼称は江戸時代まで存在しなかったのです。
江戸時代にオランダから伝来した医学とそれまで中国伝来の医学を区別されるために、前者を蘭方と呼び、後者を漢方とよぶようになったのです。
中国での伝統医学の確立(日本漢方の元となる)
中国では漢の時代(紀元前202から220)までに、神農本草経、黄帝内経(こうていだいきょう)、傷寒論の三大古典が著され、中国伝統医学の基礎が確立しました。
金元時代(日本のは平安時代から室町初期)には、陰陽五行論を用いて漢方医学の基礎と臨床が統一的に体系化され、中国伝統医学の一応の完成をみました。
中国医学および日本の漢方の医学書・草本の歴史
黄帝内経
春秋戦国時代以降の医学論文の集大成したもので、素問(人体の生理、病理)と霊枢(鍼灸術、解剖)からなり、不老不死を追求した中国最古の基礎医学書である。
そこに一貫して流れる理論基礎は、陰陽五行論です。
神農本草経
中国最古の本草書であり、中国:後漢(1-2世紀)、日本:弥生時代に医薬書として成立したようですが、365種類の薬物が記載されいます。
傷寒論、金匱要略
後漢時代に張仲景(150-219年)が編著した診断・治療マニュアルです。傷寒と呼ばれる急性熱性疾患に対応する方剤が記され、傷寒以外の疾病(雑病)の診断・治療マニュアルとして金匱要略も著しました。
新修本草
西暦659年、蘇敬らは新修本草を著しました。この中国最古の勅選本草書で、別名唐本草と呼ばれており、仁和寺に写本が残されています。
本草和名
918年に深根輔仁により著された日本現存最古の薬物辞典
和剤局方
大観年間(1107年 - 1110年)に中国国家機関の関与のもと、中国にて発行された医薬品の処方集の名称。
経史証類大観本草
北宋時代の1108年に編纂された経史証類大観本草は、図版も優れ、文献性も高い。
本草綱目
明時代の1596年に李時珍が著した本草綱目には、おおよそ1900種類の薬物が収載されおり、我が国の江戸時代以降の本草学(小野蘭山)に大きな影響を与えました。
大和本草
養生訓で知られる貝原益軒は、1709年に本草綱目所載の薬物と我が国の民間薬をあわせた大和本草を著しました。
薬徴
江戸時代(1771年)に、吉益東洞よって著され、薬能が明らかな53種の薬物が収載された薬物書です。
近代日本での漢方
日本で保険薬価に収載されている医療用漢方エキス製剤は、147種類あります。
そのうち中国書籍を出典とする方剤が120種類(約84%)、日本書籍を出典する方剤が23種類(16%)となります。
中国書籍を出典とする120方剤のうち、傷寒論または金匱要略を出典とする古いものが69方剤と半数以上を占めており、古法と呼ばれています。
残りの51方剤は、和剤局方や万病回春などの宋代以降の書籍を出典とするもので、後世方と呼ばれてます。
ちなみに、現在の日本での医薬品集である日本薬局方では、初版(1886年)では、89品目の生薬が収載されていたにすぎませんが、第16(2011年)改正日本薬局方では、生薬216品目、漢方処方エキス22品目が収載されるまでになっています。
日本薬局方では、生薬や処方の有効性や品質を担保するために、多種多様の品質規格が規定されています。生薬のほとんどが、中国から輸入されてきますので、農薬の心配や有効成分が本当に入っているのかなど心配になると思いますが、日本薬局方に収載されているものは、他の医薬品同様安心して服用ができるのです。
引用:好きになる漢方医学:喜多敏明著、講談社、日本薬局方の歴史と生薬の基礎原料、横浜薬科大学教授寺林進、昭和薬科大学漢方治療薬教育研究室佐竹元吉、日本薬剤師研修センター 漢方・生薬薬剤師口座テキスト3